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No.79(2025.1)

INDEX

1.理事長 新年の挨拶
2.第78回日本胸部外科学会定期学術集会 演題募集について(2/17(月)~)

1.理事長 新年の挨拶

新年のご挨拶


日本胸部外科学会 理事長 
獨協医科大学 呼吸器外科 千田 雅之 

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 胸部外科学会員の皆様、新年明けましておめでとうございます。2025年が始まりました。21世紀も4分の1、四半世紀が過ぎてしまいました。20世紀に育った身からすると時の流れの速さに驚かされてしまいます。昭和に外科医になった頃には、手術というものが、モニターを見てするものになったり、患者に背を向けてロボットを操作してするものになるとは想像もしていませんでした。この40年の社会の技術革新は医療、外科の姿を大きく変えました。あの頃に今の技術や薬があれば救えた命がたくさんあったのにと思ってしまいます。一方、技術革新はいいことばかりとも言えません。WHOやUNICEFなどの努力により発展途上国の乳幼児死亡率は劇的に減少しましたが、成人となった乳幼児は国内に十分な仕事がなく経済難民として北米や欧州に押し寄せています。一昔前まで死の病であった癌や心大血管疾患は治る病気となり、高齢者人口の増加の一因になっています。高齢者の増加、少子化、労働人口減少は未だ経験したことのない不安定な社会の始まりを告げていると言えましょう。我々胸部外科の領域でも、社会の高齢化に伴い、手術数、業務量は増加しています。一方、業務量の増加と比較すると外科医の数は増えていません。この20年で呼吸器外科医の数は変わらないのに手術数は2−3倍に増えています。我々胸部外科医は、パスの導入や手術の定型化などにより労働生産性を上げることで対処してきましたが、これもそろそろ限界まで来ています。人口は減少に転じているので、手術数もそろそろピークアウトするはずですが、施設の自然淘汰による集約化や手術適応の増加により、思ったより減少していません。そこに働き方改革ですからタスクシフトは必然となります。胸部外科学会では、胸部・心臓・血管外科領域特定行為研修修了看護師登録制度および準会員制度の導入を始めました。これは心臓血管外科専門医認定機構を嚆矢に始まる、特定行為を行う看護師の診療科への専従配属に対応するものです。これからの胸部外科診療の日常に看護師が診療科スタッフとして加わる日も近いことでしょう。特定行為38行為全てを行う看護師に診療看護師(NP)がいます。NPは国家資格ではありませんが、大学院修士課程を修了しており特定行為を行えるだけでなく病態生理を履修していることから、より医師に近い存在となります。昨年の金沢での学会での理事長企画ではNP学会の理事長も迎え座談会を開催しました。その発表を見ると、NPは未だ数百人と数が少なく、引く手数多の状態が窺い知れます。また、NPの診療科分布を見ると胸部外科に勤務しているNPは少なく、胸部外科は他の診療科の後塵を拝している状況です。NPに胸部外科を選んでもらえるような環境整備も必要なのでしょう。学会として考えていく必要があります。
 一方、NPや特定看護師にタスクシェアする仕事とは何でしょうか?特定看護師であれば病棟のさまざまな処置であるかもしれません。NPであれば、より広範囲な病棟の業務や手術の助手でしょうか。NPは処方権を持っていませんから処方そのものはできませんが、病院判断で代行入力を認めているところもある様です。もちろん医師の承認が必要ですが、入退院時の継続処方やDo処方の入力などがタスクシェアできるのかもしれません。また、検査結果の異常値のチェックなどもしてもらえるでしょう。しかし、パスから逸脱した術後患者の治療はやはり我々医師の仕事です。本邦の良好な手術成績の背景には、具合悪くなる前に患者に介入して重症化させないというきめ細かい術後管理が重要な役割を果たしてきました。タスクシェアで得られた時間は、より患者を見つめる時間に当てる必要があることは言うまでもありません。
 これまで本学会が進めてきた政策課題には、NP、PAの診療科への導入に加え、施設の集約化、サージカルフィーの問題もあります。施設の集約化は、小児心臓外科領域から始まることとなりますが、全ての領域での集約化は避けて通れませんし、既に地方においては自然発生的に集約化が進まざるを得ない状況となっています。本邦のこれからの医療を考えるにあたり、喫緊の課題は地域の中核病院の経営の安定です。診療報酬が上がらない中、薬価、材料費、光熱費、人件費は上がり続けています。本邦の医療費に余裕がない現況ではサージカル・フィーの問題はなかなか解決が難しいかもしれません。先の座談会にて厚労省の出席者は「本邦の外科医一人当たりの年間手術数は欧米の10分の1であり、こう言う状況でのサージカル・フィーは難しいのではないか」と発言していました。手術数が今後増えないであろう状況では、サージカル・フィーを手に入れるには、胸部外科医を10分の1に減らす必要がある様です。10分の1に減るのであれば、必然的に施設の集約化は進むでしょう。現実はそこに進むのかもしれませんが、それが理想とは到底思えません。外科医が10倍の手術をするには手術に集中する必要があり、術後管理をNPやレジデントに任せる様になるのはわかります。しかし、10分の1に外科医を減らすには外科医の選抜をしないといけません。「10人の入局者がいたとき、優秀な一人を除き9人の首を切ることが日本人にできるのか?」というと難しい気がします。米国ではそうやって選抜されたものだけが胸部外科医となっていますが、本邦では、術後管理や雑務の要員として多くの医局員が必要であり、適性に関係なく希望者を入局させてきた経緯があります。不適格者は自然に去っていってはいますが、中間の外科医が相対的小規模病院に就職先を得ていることで(医局員の出口戦略としては正しいのですが)施設の集約化が妨げられています。しかし、これは一方で患者サイドから見れば遠くまで通わなくても身近で医療を受けられるわけで、喜ばしいこととなります。それには「成績に差が出づらい標準的な治療のみを行う場合においては」と言う但し書きがつくのは当然ですが。
 外科志望者の全国的減少は、我々が内包する自己矛盾をゆっくり解決に向かわせてくれるのかもしれません。「ピンチはチャンス」という言葉があります。これまで述べてきたような色々な外的要因により、本邦の医療は曲がり角に来ているのは事実です。しかし、我々が築いてきた世界に誇る治療成績を維持しつつ、昭和以来の古いシステムから脱却し新しいシステムに移行するよう内部変革をしていくことこそが、これからの数年あるいは十数年の我々の仕事になるのではないかと考えています。日本人は、新しいものを開発するのは苦手ですが改良するのは得意とされています。欧米を追従するのではなく、我々にとってより使い勝手が良く、より良い成績が出せる医療システムになるよう現行制度を改良していきましょう。
 最後に、我々は学会ですので新しい知見を世界に発信していく必要があります。研究の種は色々なところに転がっています。「なんとなくそうなんだけれど、それを表現する言葉がまだない」というところに切り込むことでbreak throughが生まれます。今年も本邦からLancetやNEJMに載るような業績が出ることを祈っております。

2.第78回日本胸部外科学会定期学術集会 演題募集について(2/17(月)~)

 第78回定期学術集会(会期:2025年10月23日(木)~25日(土))の演題受付期間は、2月17日(月)~4月25日(金)です。
 受付開始前にホームページにて詳細をご案内いたしますが、まずは取り急ぎ演題受付期間のご連絡を申し上げます。
 たくさんのご応募をお待ちしております。

 第78回ホームページ

編集後記
広報委員会委員 野上 英次郎
-2025年さらなる飛躍を願って-
 新年明けましておめでとうございます。2024年も多くの課題に取り組み、胸部外科学会としても大きな進展を感じた年でした。診療看護師(NP)の導入や、働き方改革による変化など、外科医を取り巻く変革が少しずつ具体的な形となり、皆様の周囲でも少しずつ変化を感じている事かと思います。
 一方で、理事長の記事にございます通り、私たちが直面する課題は山積しています。高齢化や労働人口の減少、外科医の不足、さらには施設の集約化といった問題は、私たち中堅世代が主体的に解決策を模索していくべき重要なテーマです。タスクシフトや特定行為看護師の役割拡大等もありますが、若手外科医が安心して研鑽を積める環境を整えることが、胸部外科の未来を支える大切な基盤となると信じております。
 記事にもございます通り、10月23日(木)~25日(土)統括会長安田卓司先生、分野会長(心臓)湊谷謙司先生、分野会長(呼吸器)伊豫田明先生による第78回日本胸部外科学会定期学術集会が大阪国際会議場で開催され、演題募集も始まりますので、皆様からの多くの演題をお待ち申し上げます。
 本ニュースレターが会員の皆様にとって有益な情報源となり、2025年がさらなる飛躍の年となることを願っております。最後に、第二回JATS-NEXT annual conferenceが8月30日(土)に大阪ナレッジキャピタル・カンファレンスルームタワーC8階で開催されます。皆様のご参加を心よりお待ちしております。
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