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No.80(2025.3)

INDEX

1.第77回日本胸部外科学会定期学術集会 開催報告 特集号
  -1.統括会長、分野会長挨拶
  -2.新名誉会長・新名誉会員・新特別会員
  -3.定時評議員会 役員等選挙(選出)結果
  -4.各種表彰

1.第77回日本胸部外科学会定期学術集会 開催報告 特集号

-1.統括会長、分野会長挨拶
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左から亀井分野会長(食道)、佐藤分野会長(呼吸器)、千田理事長、竹村統括会長(心臓)
【竹村 博文 統括会長(心臓)挨拶】
 2024年11月2日から4日にかけて、第77回日本胸部外科学会定期学術集会を金沢で開催いたしました。私の長年の経験から11月3日の文化の日は必ず晴れると確信のもと準備をしてきましたが、季節外れの台風が朝鮮半島から急激に右旋回をし、能登半島方向に向かっている天気図をハラハラしながら見ておりました。残念ながら2日は激しい雨に襲われ、参加者の皆様には大変ご迷惑をおかけしましたが、幸運にも台風は熱帯低気圧に変化し、3日4日は穏やかな天候に恵まれました。皆様の暖かいご支援の賜物と喜んでおりました。
 令和6年は厳しい年明けでした。元日に能登半島を襲った令和6年能登半島地震では、大きな被害があり、多くの犠牲者、数多くの避難の皆さん、そして能登半島以外の地域でも1.5次避難、2次避難を受け入れる大変な時期があり、上下水道の復旧が春以降にずれ込み、今なお、多くの方々が避難所生活を余儀なくされています。その中での学術集会の開催準備を進めることに多少のためらいを感じながら進めて参りました。不謹慎かもしれませんが、幸いにも金沢市における被害は少なく、金沢大学、大学附属病院での被害はほぼなく、金沢駅前の会場も開催に支障ないとのことで、多くの会員から心配のお言葉を受けながら無事に開催にこぎ着けましたこと、ありがたいことと感謝し、お礼申しあげます。
 さて、今回の学術集会のテーマは「Singularity -Escape from Inertia-」としました。Singularityとは、人工知能が人類の知能を超える時期が来ることを予言したコンピューター学者が40年以上前に使用した言葉です。学術集会準備期間の3年間でも、AIの進歩、特にChatGPTの有用性や脅威を感じていて、この言葉を採用した記憶があります。2025年に入り、米国の政治の変化、合成AIに対する投資のすさまじさなどから、当時感じていたスピード感を遙かに超える進化、変化、またそれを報道するマスコミの適応の早さに圧倒されているこの頃です。学術集会のテーマとしてのSingularityは単に変革という意味で使ったのですが、想像を超える変化に多少戸惑っております。またInertiaとは慣習というイタリア語から英語になった言葉です。慣習にはいいものと悪しきものがあると思いますが、ここでは慣れきった悪しき慣習からの脱却という意味で使っています。
 学術集会では3つの変革を行いました。
 一つ目はシンポジウムなどのいわゆる上級セッションになるべく多くの人に集まって頂きたいという思いから、一般演題を上級演題と同時に開催しないことにしました。3分野のシンポジウム、パネルディスカッション、ワークショップを多くても7会場で開催し、そこに海外招請演者をKeynote lectureと称して招請講演をしていただき、その後、同じテーマでのセッションとしました。その結果、各上級セッションには、例年より多くの参加者があり、熱い議論がなされました。この形態がよかったとのお褒めの言葉もいただき安堵しております。上級セッションは心臓分野では26、呼吸器では22、食道では11のシンポジウム、パネルディスカッション、ワークショップを行いました。
 二つ目は、一般演題は全て口演発表としました。発表時間は少し短くなりましたが、口頭での発表の機会を増やそうとの意図でした。一般演題応募数823(心臓519、呼吸器265、食道39)と、例年より多くの応募を頂き感謝しております。また、上級セッションの公募枠165に対しては421と多くの演題応募があり、採択率は39%と厳しくなりました。その中の一般演題として査読された256演題と823演題を合計した1079の一般演題応募に対して採択率は68%と例年並みになりました。一般演題の発表の場は、第一会場も含めて、大きな会場での発表もあり、若手の先生方にとって貴重な経験となったのであれば、うれしく思います。しかしrapid fireセッションは一会場を3つに区切ったこともあり、やや音響の状況が芳しくなく、ご迷惑をおかけしたと反省しております。しかしどのrapid fireの会場を覗いてみても、例年のポスター会場より多くの聴講があり、活発なディスカッションがなされていました。短い時間でも発表でも要点を纏める練習、的確に応答する訓練になったのであれば、よかったのではないかと思います。ポスター会場で肉声、もしくは拡声器での発表も逆に発表が聞き取れなかったり、ポスター会場後ろではおしゃべりがあったりで、一長一短があるのは事実です。またポスターには、長時間じっくり内容を読めるという大きな利点があり、今回の形式では多くの会場で一斉に一般演題が進行する関係で、多くの症例報告を含めた発表が聞けないという欠点もあります。今後の学会形式のあり方の検討に一石を投じたと思っていただけたら幸いですし、さらなる機器の進歩で新しい発表の語りが模索され、改善されることを期待しております。
 三つ目は3分野の均等化でした。心臓、呼吸器、食道の3本柱が揺らいでは胸部外科学会の存続に関わります。どの分野の参加者も参加して有意義であるという内容にしなければと3会長で話し合い、そのセッション数のバランス、内容を検討しました。特に食道分野の亀井会長には他の食道関係の学術集会との棲み分けを考えていただき、特に胸部外科学会学術集会は手術手技に特化していこうという判断から、手技に関するセッションを多く作っていただきました。そのお陰もあり、食道分野の参加者も例年より多くあり、演題募集も多く集まりました。先にも述べたように上級セッション数も例年より、各分野での差を縮めました。
 また領域横断セッションも3つ、胸部外科医労働環境委員会 / チーム医療推進委員会セッション、JATS-NEXT委員会セッションを同時進行で走らせ、参加者がどれかの領域横断セッションに参加できるようにしました。領域横断のテーマは「Singularity:外科医療界におけるAI、IT」「胸部臓器移植医療のサステナビリティ」「他臓器を傷つけるのを防ぐための外科的解剖知識もしくは、合併症を起こさないための解剖学的知識」という大変興味あるテーマで開催され、多くの参加者を得ました。また将来の胸部外科を背負っていくJATS-NEXTのセッションを、他のシンポジウムの影で開いてはいけないとのご指摘もあり、この時間帯に行い、多くの若手医師の参加を得ることができました。
 また、理事長講演、3分野会長講演も同じ日にまとめ、さらにそれぞれ20分、25分とコンパクトにし、全ての会員が聴講できる形にしました。これも新しい試みでした。
 以上の小さいながら変革、改革を行った学術集会でしたが、お陰様で参加者数が3,577名と例年並みとなり、地方開催としては多くの参加をいただき、この上ない喜びであります。
 分野別では心臓1,565、呼吸器980、食道185と、過去最高レベルの参加者数をいただけましたこと、本当に感謝の気持ちで一杯であります。ありがとうございました。また従来より多くの外科講習セッションを設け、多くの参加者がありました。またオンデマンドで発信したPostgraduate courseも1,882名の登録、医療安全講習では1,688回の再生回数を数えました。
 本当に多くのご参加に厚く御礼申しあげます。
 心臓分野に関しては、第77回日本胸部外科学会定期学術集会の前日の11月1日と2日の午前にかけて、AATS / JATS Mitral Conclaveを開催しました。David Adams先生、Patrick M. McCarthy先生、Joseph Woo先生、Pedro Del Nido先生、Anelechi Anyanwu先生、Taweesak Chotivatanapong先生、Song Wan先生といった錚々たるメンバーに参加していただき、11月1日はAdvance Course、2日の午前中はBasic Courseとして、僧帽弁の解剖から始まり、生理学、病理学そして手術手技にわたる、非常に内容の濃いセッションでした。全て英語のセッションですが、皆さん熱心に聴講、質疑に参加され、大変有意義な2日間であったと思います。その中でYoung Investigator Award(JATS-NEXT Award)セッションが開催され、選ばれた10演題が発表され、そのなかから優秀3演題が選ばれ、今年New Yorkで開かれるAATS Mitral Conclaveでの発表の機会が与えられ、さらに米国への渡航補助を含むことが承認されました。金沢の地で、このような国際学会が開けたことに大変感謝しております。呼吸器の「AATS / ATS International Thoracic Surgical Oncology Summit」、食道の「各施設における食道癌ロボット手術の取り組みと成績」等に関するコメントは、佐藤会長、亀井会長からお話があると思います。日本胸部外科学会の国際化も重要な課題の一つです。今回のこれらの国際学会との協働が胸部外科学会の目的達成の一助となったのであれば幸甚であります。
 最後になりますが、今回の学術集会開催にあたり、渾身的貢献をしていただいた学会事務局、運営企画で指導、協力していただいたコングレ株式会社様、協賛いただいた企業様、各大学の事務幹事の先生方、各大学の医局員の先生や秘書様、各大学同門会の皆様、海外からお越しの、そしてWebでご参加していただいた海外招請の先生方に衷心から御礼申しあげて、第77回日本胸部外科学会定期学術集会開催のご挨拶とさせていただきます。
 本当にありがとうございました。

2024_9_takemura(160×190).jpg (8 KB) 竹村 博文
所属施設:金沢大学 心臓血管外科
卒業大学:金沢大学医学部
経  歴:1985年 金沢大学医学部卒業
     1993年 金沢大学 医学博士号取得
     1998年 ニュージーランド・Green Lane病院 Registra
     2001年 金沢大学 心肺総合外科(旧第一外科) 講師
     2003年 岐阜大学 高度先進外科 教授
     2015年 岐阜大学 名誉教授
     2015年 金沢大学 先進総合外科(旧第一外科) 教授
     2015年 石川県医師会 副会長   
     2016年 金沢大学附属病院 副病院長
     2020年 金沢大学 心臓血管外科 教授
     2020年 金沢大学保健管理センター長
     2024年 MBA取得(Anglia Ruskin Univ. 英国)
趣  味:ゴルフ、サックス
好きな言葉:Where there is a will, there is a way

【佐藤 之俊 分野会長(呼吸器)挨拶】
第77回日本胸部外科学会定期学術集会開催の御礼とご報告
 第77回日本胸部外科学会定期学術集会の分野会長(呼吸器)を拝命した、北里大学医学部呼吸器外科学の佐藤之俊です。まずは、このような貴重な機会を与えていただきました学会会員ならびに関係各位の皆様方に心より感謝申し上げます。
 約2年前から統括会長の竹村博文先生、食道分野会長の亀井尚先生、そして事務局の皆様とともに力を合わせて準備を進めて参りましたが、無事開催できたことを光栄に存じます。
 呼吸器分野においても、学術集会のテーマ『Singularity -Escape from Inertia-』に沿ったプログラム構成で、呼吸器分野の上級演題は従来の枠組みを踏襲し、「肺 腫瘍」「肺 非腫瘍」「移植」「縦隔」「胸壁、胸膜」「手術手技、低侵襲、拡大、新技術」の6カテゴリーでした。全国のプログラム委員の先生方を中心に各カテゴリー共に、外科的観点を中心として魅力的で充実したシンポジウム、パネルディスカッション、ディベート、そしてワークショップが企画実行されました。とくに、シンポジウムは「肺 腫瘍」「胸壁、胸膜」「手術手技、低侵襲、拡大、新技術」の3つに設け、それぞれ「手術術式の変遷(開胸・拡大手術から低侵襲性手術の時代)」、「悪性胸膜中皮腫:外科治療の pit fall と周術期合併症」、「小型肺癌に対する新規技術を用いた診断・治療へのアプローチ」というテーマでした。また、海外からの招請者3名は、これらのシンポジウムで基調講演のご講演をいただきました。その3名は、Valerie W. Rusch先生(Memorial Sloan Kettering Cancer Center, NY)、Calvin Ng先生(Division of Cardiothoracic Surgery, The Chinese University of Hong Kong)、そしてHisashi Tsukada先生(Brigham and Women’s Hospital, Boston)でしたが、Valerie W. Rusch先生はこの学術集会において、当学会から名誉会員として賞状が授与されました。
 パネルディスカッションとして「肺移植周術期管理の標準化は可能か?」「胸腺上皮性腫瘍:再発治療、周術期治療、新規治療」「小型肺癌に対する区域切除・楔状切除の功罪」「非手術療法後の肺癌に対する低侵襲手術」、ディベートとして「胸壁悪性腫瘍の外科治療」「充実性小型肺癌に対しても積極的縮小手術を施行すべきか」「膿胸腔のDead spaceをいかに埋めるか」、ワークショップとして「ICI併用術前補助療法 -適応とピットフォール-」「小児胸部臓器移植の 現状と展望」「頸・胸部境界領域に発生した縦隔腫 瘍に対する手術の工夫(含 胸腔鏡・ロボット支援手術)」「肺癌に対する低侵襲手術の 適応拡大」「難治性気胸」「区域切除後の局所再発に対する completion lobectomy」、さらにビデオワークショップとして「隣接臓器浸潤肺癌の手術」「巨大縦隔腫瘍に対する治療戦略」「難渋した肺感染症の外科治療」という時宜にかなったセッションテーマで、有意義な議論が展開されました。なお、優秀演題としては、例年通り2題の演題が選定されましたが、今後のご発展を期待したいと思います。
 さて、本学術集会では一般演題を一般口演、クリニカルビデオ、ラピッドファイア(RF)とし、上級演題との同時進行はありませんでした。そして、優秀な総数361題の演題を登録いただき、それらに対する慎重な査読の結果242題を採択(採択率67%)しました。各セッションともに2名の座長をご依頼し、様々な観点から活発な議論が展開されたと思います。この試みに対しては様々なご意見を頂きました。これらを今後の学術集会の開催に是非役立てていただけますと幸いです。
 この第77回学術集会から、呼吸器分野においてもAATS(American Association for Thoracic Surgery)とのジョイントセッションを会期中に正式にスタートしました。International Surgical Oncology Summit at JATSというセッションで、学会3日目の午前に開催しましたが、参加者による熱い議論が展開されたと思います。今後さらにAATSとの連携が強化されることを期待します。
 若手呼吸器外科医の会、肺癌合同登録委員会報告、呼吸器分野CPAも例年通り開催されました。さらに、併設の関連研究会として今回もロボット手術手技研究会、単孔式胸腔鏡手術研究会も開催の運びとなりました。非常にタイトなプログラム編成のため、これらの2研究会の開催時間が遅くなり、また、一部開催時間の重複が起きてしまいました。関係者の皆様と参加者の先生方には大変ご迷惑をお掛けいたしました。
 共催セミナーとしてランチョンセミナーとアフタヌーンセミナーも最近の呼吸器外科領域のトピックを中心とした興味深い内容でした。
 このように、この学術集会の準備・運営を通して、統括会長の竹村先生、食道分野会長の亀井先生という素晴らしい仲間と一緒に仕事ができたことはかけがえのない経験と思い出になりました。
 末筆ではありますが、開催にあたりご尽力いただいた全国のプログラム委員、日本胸部外科学会役員、学会事務局、運営事務局、金沢大学と東北大学の医局員の皆様、当科医局員、さらにはご支援いただいた多くの企業、組織の皆様に心より感謝申し上げます。最後に、2025年10月は大阪の第78回学術集会が成功しますように心からお祈り申し上げます。

2025_3_sato(160×190).jpg (7 KB) 佐藤 之俊
所属施設:北里大学医学部呼吸器外科学
卒業大学:東京医科歯科大学医学部
経  歴:1985年 東京医科歯科大学病理学大学院
     1989年 三井記念病院 外科 レジデント
     1992年 癌研附属病院 呼吸器外科フェロー
     1994年 結核予防会複十字病院 呼吸器外科 医員
     1999年 癌研附属病院 呼吸器外科 医員
     2007年 北里大学医学部 呼吸器外科学 主任教授
     2018年 北里大学病院 副院長(診療担当)
     2021年 北里大学メディカルセンター 病院長
趣  味:ロードバイク(ヒルクライム)

【亀井 尚 分野会長(食道)挨拶】
第77回日本胸部外科学会定期学術集会食道分野の報告と御礼
 この度の第77回日本胸部外科学会定期学術集会を、統括会長の竹村博文先生、呼吸器分野会長の佐藤之俊先生とともに開催させていただきました。伝統ある本学会の食道分野会長を務めさせて頂く貴重な機会を与えていただきました会員の皆様にあらためて心より感謝申し上げます。金沢の地で多くの先生方と直接お会いして、face-to-faceでディスカッションできたことは、これが本来の学術集会の在り方と再認識するとともに、大変嬉しく感じたところです。
 食道外科医はこの胸部外科学会を外科手術に主眼を置き、かつ3臓器横断的という特徴を持つ学会と認識しています。領域横断セッションは、「他臓器を傷つけるのを防ぐための外科的解剖知識もしくは、合併症を起こさないための解剖学的考案など」をテーマとし、肺静脈の走行に関する知見を呼吸器外科の先生方と議論することができました。さらに、心臓外科、呼吸器外科の先生方と食道損傷時の対応や消化管の愛護的取り扱いについて共有できましたし、複合手術についても実臨床例を挙げてディスカッションできました。上級セッションは、これまでより食道領域の時間を多く設定し、幅広いテーマで組むことができました。急速に増加しているロボット手術は2018年の保険収載から症例蓄積が進み、短期成績に加え、ある程度の中期成績も報告されています。 「各施設における食道癌ロボット手術の取り組みと成績」を企画しましたが、まず2名の海外指定演者からそれぞれの国での現状について有意義な基調講演をいただきました。Long-Qi Chen先生(中国)からは年間500例以上の食道癌手術をする施設でのロボット運用と胸腔鏡・開胸手術との比較、Yin-Kai Chao先生(台湾)からは胸腔鏡とロボットの多施設でのRCTの結果を詳細に報告いただきました。続けて本邦の各施設の現状を把握するとともに将来性を議論できました。「上縦隔リンパ節郭清におけるMIEの工夫」では、世界初の食道癌胸腔鏡手術を行った内視鏡手術のパイオニアであるAlfred Cuschieri先生(英国)に基調講演をお願いしていましたが、会期前に予期せぬ入院治療が必要となり残念ながら講演をいただくことができませんでした。現在、退院され回復に向かっているとのことですので早期の復帰を祈っております。このセッションは胸腔鏡、縦隔鏡、ロボットと様々なアプローチでの上縦隔郭清について、手技と反回神経麻痺の回避についてディスカッションを行うことができました。近年、食道癌は免疫チェックポイント阻害剤を含んだ集学的治療が大きく進歩し、従来は切除不能と判断された症例でも手術を行うチャンスが少なからず認められるようになり、Conversion手術がトピックの一つとなっています。「Conversion Surgeryの適応と限界」では、各施設の成績ついて発表いただきました。短期成績は概ね良好で安全性は許容されるものの、いまだ長期成績の報告が十分でなく真に恩恵を受けるのはどのような基準を満たす患者さんなのか、今後の継続的な解析が必要となります。その他、改訂された食道癌取り扱い規約第12版における臨床的リンパ節転移の妥当性についての企画「胸部食道癌におけるcStageIIIAの妥当性の検証」や縫合不全、胃管壊死のマネージメントに関する取り組みを議論する「食道癌術後縫合不全、胃管壊死の早期診断と治療」、術後合併症が長期成績に有意に影響することが明らかになる中での「周術期合併症を減らす試み」、超高齢者や併存症をもつ患者さんの増加を背景にした「Staged Surgeryの現状」など、多くのセッションで活発な討論をすることができました。「食道癌手術における術中副損傷への対応、開胸移行」や「胸腔鏡下食道切除術における“ちょっとしたコツと工夫”」は胸部外科学会ならではの手技に特化した企画でしたが、多くの先生方にとって参考となるセッションであったと思います。また、若手食道外科医のための企画、「内視鏡外科技術認定ビデオセミナー」、「食道外科専門医試験突破への道」も会期最後の時間帯であったにもかかわらず、多くの参加をいただくことができました。全体を通して非常に充実したプログラムであったと思っています。
 学術集会の準備・運営を通して、竹村先生、佐藤先生という素晴らしいお二人の先生と一緒に仕事ができたことについて、両先生にあらためて心より御礼を申し上げます。また、千田雅之理事長、澤芳樹前理事長をはじめお力添えいただいた役員の先生方、ご協力いただいたプログラム委員の先生方、ご参加いただいた会員の先生方、事務局の皆様、協賛企業の方々からのご支援に心より感謝申し上げます。ありがとうございました。

2024_9_kamei(160×190).jpg (8 KB) 亀井 尚
所属施設:東北大学大学院医学系研究科 外科病態学講座 消化器外科学分野
出身大学:東北大学(1991年卒)
経  歴:1991年 岩手県立磐井病院 外科 研修医
     1994年 東北大学医学部 第二外科 入局
     1995年 東北大学大学院医学系研究科 入学
     1999年 同卒業(医学博士取得)、石巻赤十字病院 外科 副部長
     2002年 厚生労働省 特別研究員
     2006年 東北大学病院 移植再建内視鏡外科 助教
     2012年 東北大学病院 移植再建内視鏡外科 講師
     2014年 東北大学大学院医学系研究科 先進外科学分野 准教授
     2016年 東北大学大学院医学系研究科 消化器外科学分野 教授
     2019年 東北大学病院 副病院長
趣  味:音楽鑑賞、旅行
好きな言葉:常に視座を高く持つ

-2.新名誉会長・新名誉会員・新特別会員

新名誉会長
 松居 喜郎

新名誉会員

 淺村 尚生 荻野  均 坂本喜三郎 中島  淳 長谷川誠紀 夜久  均 渡邉  敦
 Alfred Cuschieri David H. Adams Valerie W. Rusch

新特別会員

 入江 博之 奥村 典仁 奥村明之進 織田 禎二 小宮 達彦 近藤 和也 鈴木 孝明
 西村 元延 松村 輔二 宮入  剛 横山 斉

-3.定時評議員会 役員等選挙(選出)結果

統括会長【第78回】
 安田 卓司(食)

分野会長【第78回】

 湊谷 謙司(心)伊豫田 明(肺)

次期分野会長【第79回】

 小野  稔(心)井上 匡美(肺)竹内 裕也(食)

次々期分野会長【第80回】

 新浪 博士(心)臼田 実男(肺)佐伯 浩司(食)

理事
 宮地  鑑(心)福田 宏嗣(心)芳村 直樹(心)六鹿 雅登(心)竹村 博文(心)
 塩野 知志(肺)岩田  尚(肺)佐藤 幸夫(肺)大久保憲一(肺)
 小柳 和夫(食)
 齋藤  綾(心)前田寿美子(肺)

監事

  椎谷 紀彦(心)

-4.各種表彰

-2024年度(2023年Vol.71)GTCS優秀論文賞-

心臓血管外科

 松浦  馨(千葉大学医学部附属病院 心臓血管外科)
 Late outcome of coronary artery bypass grafting with or without mitral repair for moderate or moderate–severe ischemic mitral regurgitation
 西山 正行(国立循環器病研究センター病院 心臓血管外科)
 Long-term outcomes of combined pulmonary endarterectomy and additional balloon
pulmonary angioplasty for chronic thromboembolic pulmonary hypertension

呼吸器外科

 中野 隆仁(関西医科大学 呼吸器外科学講座)
 Stagnating blood flow related to thrombus formation in pulmonary vein stump after left
upper lobectomy
 高森 信吉(独立行政法人国立病院機構九州がんセンター 呼吸器腫瘍科)
 Lymph node dissections and survival in sublobar resection of non-small cell lung
cancer≤20 mm

食道外科
 中島 政信(獨協医科大学 上部消化管外科)
 Therapeutic strategy aiming at R0 resection for borderline resectable esophageal
squamous cell carcinoma using induction chemotherapy with docetaxel, cisplatin, and 5
fluorouracil

-2024年度(2023年Vol.71)GTCS Best Reviewer 賞-

心臓血管外科
 井上 陽介(国立循環器病研究センター病院 血管外科)
 川本 俊輔(東北医科薬科大学医学部・医学研究科 心臓血管外科)
 清家 愛幹(国立循環器病研究センター病院 血管外科)

呼吸器外科

 舟木壮一郎(兵庫医科大学 呼吸器外科)
 上田 和弘(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科外科学講座 呼吸器外科学分野)

食道外科

 木村 和恵(国立病院機構九州がんセンター 消化管外科)

-第7回(2024年度)JATS Research Project Award-

JATS award for transitional clinical research (臨床研究助成)
(研究期間:3年 支援額:100万円 選出数:1件)

SAVR術後予後予測モデルの構築
 前田 孝一(大阪大学大学院医学系研究科外科学講座 心臓血管外科)

JATS award for young investigators (若手胸部外科医研究助成)
(研究期間:2年 支援額:50万円 選出数:3件)

心臓
小児重症拡張型心筋症における拡張障害合併に関連する因子の検討
 長谷川 然(大阪大学医学部附属病院 心臓血管外科)


高悪性度神経内分泌肺腫瘍における免疫療法の模索
- 網羅的免疫プロファイリングとmicroRNAシークエンス解析 -
 半田 良憲(県立広島病院/広島大学 呼吸器外科)

食道
非糖尿病患者における食道癌術後の糖質制限経腸栄養剤投与による術後高血糖抑制効果を探索するランダム化比較第II相試験
 寺山 仁祥(がん研有明病院 食道外科)

-第77回日本胸部外科学会定期学術集会 JATS Case Presentation Awards-

最優秀演題

心臓

 CCPA3-3 川端  良(神戸大学大学院医学研究科 心臓血管外科分野)
 CCPA2-5 永田 恵実(福島県立医科大学 心臓血管外科)

呼吸器

 LCPA2-6 矢野 海斗(慶應義塾大学医学部 外科学(呼吸器))

食道

 ECPA-6  麦谷  聡(大阪急性期・総合医療センター 消化器外科)

優秀演題


心臓

 CCPA1-6 櫻原 大智(宮崎県立宮崎病院 心臓血管外科)
 CCPA1-9 松田  優(大阪けいさつ病院 心臓血管外科)
 CCPA5-5 久保 沙羅(兵庫県立こども病院 心臓血管外科)
 CCPA4-9 玉井 夢果(近畿大学病院 心臓血管外科)
 CCPA5-7 湯田 健太郎(宮城県立こども病院 心臓血管外科)
 CCPA1-3 徳本 太哉(広島大学病院 心臓血管外科)
 CCPA5-3 正木 祥太(あいち小児保健医療総合センター 心臓血管外科)

呼吸器

 LCPA1-7 杉本  有(飯塚病院 呼吸器外科)
 LCPA3-1 横山  迅(山形大学医学部 呼吸器外科)
 LCPA1-1 竹野 巨樹(北海道大学病院 呼吸器外科)
 LCPA1-9 富安 祐太郎(産業医科大学医学部 第2外科)
 LCPA3-8 末田 侑香(山口大学大学院器官病態 外科学講座)

食道
 ECPA-2  富樫 尭史(東北大学病院 総合外科)

-2024年度JATSフェローシップ-

心臓血管外科
 神⾕ 賢⼀(滋賀医科大学外科学講座 心臓血管外科)
 柴⽥  豪(札幌医科大学 心臓血管外科)

呼吸器外科
 篠原 周⼀(愛知県厚生農業協同組合連合会安城更生病院 心臓血管外科・呼吸器外科)
 ⽮澤 友弘(群馬大学医学部附属病院 外科診療センター 呼吸器外科)

編集後記
広報委員会委員 宮崎 拓郎
 本号では、竹村博文統括会長、佐藤之俊分野会長、亀井尚分野会長による第77回日本胸部外科学会定期学術集会の開催報告が掲載されています。令和6年元日に発生した能登半島地震の影響を受け、準備に際しては多くのご苦労があったことと拝察いたします。「Singularity -Escape from Inertia-」を掲げられ、上級セッションの集中開催による活発な議論の促進、一般演題の全口演化、心臓・呼吸器・食道の三分野の均等化を図るなど、学会の在り方に新たな変革をもたらす大変充実した会となりました。
 また、各種表彰も掲載されています。私も第1回JATSフェローシップを拝受し、大変貴重な経験をさせて頂いたことが今も大きな糧となっています。若手胸部外科医の研究や海外研修を支援する学会の取り組みに深く感謝するとともに、学会誌 General Thoracic and Cardiovascular Surgery (GTCS) の発展にご尽力くださった先生方に、心より御礼申し上げます。
 4月となり新年度を迎えました。新天地へ異動された先生方も多いことと存じます。それぞれの場でのさらなるご活躍をお祈り申し上げるとともに、皆様のご健勝を願っております。最後に、第2回JATS-NEXT Annual Conference(JNAC)が8月30日(土)に大阪にて開催されます。こちらもぜひ奮ってご参加ください。
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