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No.732023年9月号)

INDEX

1.第76回日本胸部外科学会定期学術集会開催にあたって-Harmonization&Co-Creation
  -to go one step further--
  統括会長、分野会長挨拶
2.フェローシップ受賞者留学体験記

1.第76回日本胸部外科学会定期学術集会開催にあたって
   -Harmonization&Co-Creation-to go one step further--
  統括会長、分野会長挨拶

【齋木 佳克 統括会長(心臓)挨拶】
 第76回日本胸部外科学会定期学術集会を2023年10月19日(木)から21日(土)の3日間の日程で、仙台国際センターにおいて開催いたします。胸部外科学の長く深い歴史に裏打ちされ発展を遂げてきた本学会の統括会長を務めさせていただきますことは、この上なく光栄なことであり、この機会を与えてくださいました本学会の役員、会員の皆様、そして関係各位の皆様方に改めて衷心より感謝申し上げます。約3年前に統括会長に指名されて以来、呼吸器外科分野会長の札幌医科大学、渡辺敦先生と食道外科分野会長のがん研究会有明病院、渡邊雅之先生と協働しながら、胸部外科学会事務局と密に連携を図り、学術集会の準備を進めてまいりました。いよいよ会期が近づき胸の高鳴りを覚えています。COVID-19 pandemicの長きにわたる影響のため、人と人との対面の機会が大幅に減少し、情報共有の密度も低下しておりましたが、学術集会にて交流の場を設けることの大きな意義を再認識できる大会にしたいと願っております。

共創の場形成に向けて
 第76回学術集会のテーマは、“Harmonization”(調和)と“Co-Creation”(共創) -to go one step further-“です。胸部外科学を実践する医療領域において、私たちが共通して抱える課題は非常に多くあると考えられ、それらの課題解決のためには、個人、所属する施設、単一の専門領域に属する専門家集団のみの努力では達成し得ない難題も数多く残っていると感じています。特に、地域拠点化が進み施設毎の症例数が多い諸外国に比較し、日本の外科系施設における症例数が少ないことにより、エビデンスレベルの高い研究成果をもって治療体系に変化をもたらすことが苦手とされてきました。私たちは、共有する課題の一つ一つに調和と共創の精神をもって取り組む必要があろうと実感しています。学問領域における独創性を涵養するためには、rivalry精神を前面に出し、時には闘うgutsが必要となることは確かです。しかしながら、他者をrespectしつつ健全な精神と努力により相互理解を深めるところに鍵があると信じます。アカデミアの世界でも、事なかれ主義的な遠慮に満ちた表面的質疑応答は望ましくないと思いますが、相手をrespectしつつ議論を戦わせることを排除してはいけないはずです。自分の論理とは異なる相手の思考に対してニュートラルに向き合うことで、昇華の方向に向かわせることができると期待したいです。これからは、非生産的な対立軸であればそれを打破し、分断社会から決別し、尊厳に立脚した共創の時代へ向かって欲しいという願いを込めて、本学術集会のテーマを設定しました。

プログラム構成に関して
 セッションを構成する過程において、3分野の会長が意識したことは、”足るを知る“ことであります。これは本学術集会の”隠れたサブテーマ“となっています。学会が林立する現代においては、類縁学会において繰り返し同じテーマが設定され、議論されている傾向にあります。しかし、時間をかけ工夫を込めた準備がなされないと、進歩を得られない発表討論に終始し非効率的な学術集会となるリスクが生じます。少しでも課題の解決に繋げられるような研究発表を形成するためには、取り組む問題を限定し、頭脳と労力を集約する必要があると思います。それは一つの学術集会あたりのテーマを絞り、そこから漏れたテーマについては他の学会での発表討論に譲る精神に繋がることになります。第76回学術集会ではセッション数が少なめに抑えられたこともあり、いわゆる上級演題と従来の口演による一般演題の採択率は、心臓血管外科領域で18.2%、呼吸器外科領域で24.8%、食道領域で20.2%となり例年よりも狭き門となりました。そのため採択された演題発表からは有意義な知見を得つつ深い議論が展開されるものと期待しています。
 今回は、従来のポスターセッションを改め、グラウンド・プレゼンテーションと命名しました。欧米の学術集会におけるポスター発表は、掲示板への貼り紙による提示を意味しており、moderated poster sessionを除き口頭での発表は原則的にありません。その点において、日本におけるポスターセッションはとてもユニークな形式での発表と言えます。今回命名したグラウンド・プレゼンテーションは、従前のポスターセッションを少しだけ進化させた発表形態とご理解ください。文字通りグラウンド、すなわち地面に立ち口述する発表形式は、従前の一般口演のように登壇こそしないものの口頭発表という点で等価です。むしろ聴講者や座長と肉薄した距離で討論できるメリットがあります。その点を重視し、議論をさらに活性化させるため座長2名体制とし、発表時間を5分、ディスカッションを3分に設定し、発表会場をメインホールとし、個々の会場形態を台形としました。このグラウンド・プレゼンテーションには、COVID-19 pandemicで失われつつあった濃密な人との距離感を復活させ、熱のこもった議論の場を提供したいという3分野の会長に共通した思いが込められています。充実した発表の場が形成されることを祈念しております。
 上述のグラウンド・プレゼンテーション・セッション枠での演題採択数を含めた全体の採択率は63.4%となりました。演題応募数が1,304演題と例年よりやや多く応募していただいたこともあり、不採択率は36.6%と高くなりました。惜しくも不採択となった会員の皆様には、「次こそは」と奮起していただきますようお願いいたします。

少しずつの改善のために
 限られた学術集会の時間内で、会員間の交流を深めるネットワーキングのための時間を確保しつつ、新たな知見を習得したり、新たな疑問を得たり、問題解決のヒントや気づきが生まれるような体験を得るためには、それが促進されるような発表がなされ的確な討論がなされる必要があります。その一助としまして、登壇して発表される演題では最終スライドとしてエッセンス・スライドを作成し盛り込んで頂くことを各演者にお願いします。これは、central messageやgraphic abstractと称されるような内容とし、そこには可能な限り簡潔に研究の仮説や目的、方法、主たる結果と将来への展望も含め、聴衆がtake home messageとして抽出しやすい形式と記述内容として頂きたいと思います。また、ディスカッション中はその最終スライドを掲示したままの状態で討論を展開して頂きたいと考えます。上述のグラウンド・プレゼンテーションについても同様に、それぞれの発表における重要事項や核となるメッセージを演者から明確に伝えて頂けるようエッセンス・スライドに相当する要約図的な記述をポスター左上に記載していただく予定です。
 胸部外科学会学術集会として初めての試みで、日々のデイリー・ニュースの発刊を行います。フリーソフトの朝刊太郎を駆使した素人作成になりますので、失敗した際にはどうぞご海容ください。
 大切なリフレッシュメントとして、仙台国際センター向いに新設された青葉山公園追廻地区の仙臺緑彩館(せんだいりょくさいかん)を活用してください。連日の学会に疲れた時には、館外に足を運び散策などしながら頭をリフレッシュしてください。その呼び水となるようグラウンド・プレゼンテーションの一部を緑彩館内で設定しています。他にも参加者の利便を図る企画を準備しますので、秋の深まる仙台にぜひお越しください。

2023_9_saiki(160-190).jpg (7 KB) 齋木 佳克
所属施設:東北大学大学院医学系研究科 外科病態学講座 心臓血管外科学分野
卒業大学:東北大学
経  歴:1990年 東北大学医学部卒業
     1998年 東北大学大学院医学系研究科卒業 医学博士号取得
     1995年 Research Fellow, Cardiovascular Research Institute
          Hospital for Sick Children, University of Toronto, Canada
     1996年 Research Fellow, Cardiovascular Research Group
          University of Alberta, Edmonton, Canada
     1999年 Clinical fellow, Division of Cardiovascular Surgery
          University of Alberta, Edmonton, Canada
     2001年 Transplant fellow, Division of Cardiovascular Surgery
          University of Alberta, Edmonton, Canada
     2002年 Clinical fellow, Division of Cardiovascular Surgery
          Children’s Hospital Boston, Harvard Medical School
     2010年 東北大学大学院医学系研究科 心臓血管外科学分野 教授
趣  味:柔道観戦
好きな言葉:life evens out

   
   
【渡辺 敦 分野会長(呼吸器)挨拶】
-本学術集会での呼吸器分野の要諦と概略ー

 第76回日本胸部外科学会学術集会におきまして、呼吸器分野会長として伝統ある本学術集会を開催させていただくことは、この上ない栄誉であり、皆様に心から感謝いたします。齋木佳克統括会長の下、食道分野の渡邊雅之先生と協働し企画運営に務めてまいりました。第76回学術集会のテーマを『“Harmonization”(調和)と“Co-Creation”(共創) -to go one step further-』と設定しております。本学会は心臓大血管・呼吸器・食道の3分野の学術発展はもとより、領域横断的な課題解決とその実践を目的として発展してきました。さらに、胸部の重要臓器を扱う有能な胸部外科医がその独自性や特徴を発揮するための教育とチャンスを与える重要な役割を担っております。
 呼吸器分野としては、上級セッションでは、シンポジウムとして「非小細胞肺癌に対する縮小手術の適応」、 ワークショップとして「肺癌の治療戦略-組織型別の治療方針―」、「呼吸器外科学における医工連携」、ビデオワークショップとして「低侵襲呼吸器外科手術のベストプラクティス ~Do&Don’tを知り尽くす~」、「低侵襲呼吸器外科手術の限界を理解しよう」、パネルディスカッションとして「区域切除におけるリンパ節郭清」、「ドナー因子と肺移植成績」、「縦隔炎の外科治療update」、「ICI時代の悪性胸膜中皮腫の集学的治療」とのセッションテーマで演題登録を頂きました。各々明確なCQを設定させて頂き、完璧な解を示さないまでも、CQの解決に少しでも近づけるように、プログラム委員会での指定演者の先生の選任、公募演題では厳選な選択をした後、セッション構成をいたしました。
優秀演題には、2題の卓越した演題を登録させて頂きました。
 呼吸器分野の一般公募演題としては、口演では9つのセッションと2つのクリニカルビデオセッション、また、従来のポスターセッションとしての「グラウンドプレゼンテーション」を20セッション設けました。いずれも優秀な395題の演題を登録頂き、慎重な評価の上で260題を採択(採択率65.8%)いたしました。上級公募演題に25題、一般口演演題に75題、またグラウンドプレゼンテーションでは、160題の演題をご発表頂きます。各セッションとも2名の座長を置き、十分な質疑応答時間を用意し、活発なご議論を頂く予定です。
海外招聘演者として、Brunelli先生(St. James's University Hospital、UK)、Petersen先生(University of Copenhagen, Denmark)、Ng先生(The Chinese University of Hong Kong Prince of Wales Hospital、China)、Cypel先生(University of Toronto, Canada),Jones先生(Memorial Sloan Kettering Cancer Center、USA)の5名の著明な呼吸器外科医にお越し頂きます。前4名の先生には、各々上級セッションで、Keynote lectureをして頂きます。この中で、Brunelli先生は今回、当学会から名誉会員として承認されています。また、AATS会長であるJones先生には、77回JATSから正式に予定されているAATSとのジョイントセッションのパイロット企画として、「肺癌に対する縮小手術に関して」のテーマで、縮小手術に関して造詣の深い我が国の呼吸器外科医とJones先生との間で肺癌に対する縮小手術に関して、熱い討論を頂く予定です。
 さらに、呼吸器分野CPAセッションでは、全国各支部から呼吸器外科専門医取得以前の呼吸器外科を志望する先生から27題の演題登録がなされています。4つのセッションに分かれてご発表頂きます。各セッションとも、2名の座長と座長を含めた5名の審査員で総合評価がなされ、最終日にCPAでの優秀演題を発表する予定です。
 NCDセッションでは、山本博之先生(東京大学医療品質評価学 特任准教授)に、登録したデータを活用した臨床研究に関して大変重要な企画をして頂きました。ワークショップ形式で行い、すでに論文化された研究に関して、臨床研究者側と解析チーム側でその実現可能性・解析計画についてのディスカッションを再現すること、また、その後実際にどのような展開となったかを総括する形での発表を行って頂くことになっております。
 日本呼吸器外科学会の一部会である総合教育委員会若手教育部会(従来の若手呼吸器外科医の会)によって、『NEXT Clinical Dilemma in Thoracic Surgery』が企画されています。今回は、1)末梢小型病変に対するアプローチ、2)若年性気胸の治療がテーマとなっています。発表者と若手ディスカッサントが中心となって会場参加者を巻き込んだ白熱した討論がなされることが必発と考えています。
 関連研究会として、ロボット手術手技研究会、単孔式胸腔鏡手術研究会も設定させて頂きました。これらの、研究会に於きましても、中堅、若手の先生を中心に実臨床に即したご発表を頂けるものと確信しております。後者の研究会に関しましては、プログラム構成上開始時間が大変遅い時間となりましたことを御了承頂き大変感謝いたしております。
 ランチョンセミナー、スポンサードセミナーも昨今の呼吸器外科領域のトピックを含んだ内容となっております。
 今回、開催にあたりましてご尽力いただいたプログラム委員、日本胸部外科学会役員、学会事務局、運営事務局、さらにはご支援を頂いた多くの企業、組織の方々に深謝いたします。
さらに、学術集会で活発なご議論と学会で得た知識、情報の活用は勿論のこと、学会員相互の親交を深めて頂ければ幸いです。仙台で皆様のご来仙をお待ちしております。

2023_9_watanabe(a)(160-190).jpg (8 KB) 渡辺 敦
所属施設:札幌医科大学呼吸器外科学分野
卒業大学:札幌医科大学医学部
経  歴:1985年 札幌医科大学 医学部 外科学第二講座 研究生
     1991年 札幌市立病院救急医療部
     1997年 医学博士号取得
     2001年 札幌医科大学 医学部 外科学第二講座 講師
     2002年 Calgary大学 胸部外科(胸部外科クリニカルフェロー)
     2007年 札幌医科大学 医学部 外科学第二講座 准教授
     2013年 札幌医科大学 医学部 呼吸器外科 教授
     2020年 札幌医科大学付属病院副院長(教育担当)
     2022年 札幌医科大学学生部長
趣  味:釣り
好きな言葉:確乎不抜

【渡邊 雅之 分野会長(食道)挨拶】
-多くの食道外科医が集う胸部外科学会にー

 この度、第76回日本胸部外科学会定期学術集会食道分野会長を拝命いたしました、がん研有明病院の渡邊雅之です。長い歴史と伝統のある本学会の分野会長を務めさせていただくこと、大変光栄に存じております。貴重な機会を与えていただきました役員、会員の皆様に心より感謝申し上げます。齋木佳克統括会長を中心に渡辺敦呼吸器分野会長と、本学会のメインテーマであるHarmonization & Co-Creationの言葉通り、3人で力を合わせて本学会の成功のために準備を進めております。学会ポスターでは、サブタイトルであるto go one step furtherを象徴する、遠くへ続く道を食道に模してデザインしていただきました。エンジンである心臓と羽根となる呼吸器と3領域が力を合わせて胸部外科の明日を切り開いていくという齋木統括会長の強いメッセージが込められているものと考えます。
 さて、胸部外科学会における食道分野の立ち位置は大きく変化してきました。食道外科が胸部外科の1分野である欧米とは一線を画し、近年わが国の食道外科医のほとんどが消化器外科医となっています。専門医制度においても食道外科は外科、消化器外科の上の3階に位置づけられるようになりました。このような背景から、胸部外科学会に入会する若手食道外科医が減少しています。一方、実臨床において胸部外科3領域は極めて近しい関係にあり、お互いに学ぶべきことは多く、また協力して新たな治療技術や機器開発に取り組むことで多くの成果が期待されます。日本食道疾患研究会、日本食道学会はかつて外科医が中心であり、主に外科的なテーマを討論する学会でした。しかしながら、近年の集学的治療の進歩、良性疾患の広がりに伴い、内科から外科、良性疾患から悪性疾患、内視鏡治療・外科治療・放射線治療・化学療法と幅広いテーマを取り上げる学会に変わりつつあります。食道外科医が集い、外科的なテーマに絞って勉強し、討論する場としても、胸部外科学会の意義は大きいものと考えます。なお、今回の学術集会から、食道分野に限り参加費を割り引いていただくことになりました。食道領域の若手の先生方がひとりでも多く参加できるようにとの理事長はじめ役員の先生方のご配慮によるものと存じます。この場を借りて心より御礼申し上げます。
 本学会のもう一つの特徴は、テーマを絞って深く議論することを目指したことです。食道分野では上級演題を5つのテーマに絞り、2日間にわたってひとつの会場で討論できる設定としました。ビデオシンポジウムは小澤壯治先生、亀井尚先生のご司会のもと「cT3br, T4局所進行食道癌に対する低侵襲手術の妥当性」を取り上げました。このセッションではChang Gung大学のYin-Kai Chao先生にご講演いただく予定です。パネルディスカッションは藤也寸志先生、佐伯浩司先生のご司会で「食道癌術後再建法と長期的なアウトカム」をテーマとしました。Karolinska大学のFredrik Klevebro先生に基調講演をお願いしています。ワークショップ1は安田卓司先生と峯真司先生のご司会で「術野内再発を考える」とし、なぜ術野内再発が起こるのか、術野内再発に局所治療は有効かというCQに対して議論したいと思います。ワークショップ2は掛地吉弘先生、竹内裕也先生にご司会いただき、「食道癌手術の周術期管理を考える」をテーマとしました。このセッションでは外国人名誉会員となっていただくVirginia Mason Medical CenterのDonald Low先生にご講演いただきます。ディベートは森田勝先生と山崎誠先生(「さき」は正式には「たつさき」)にご司会いただき「サルベージ手術に予防的リンパ節郭清は必要か」について議論したいと思います。一般演題はすべてグラウンド・プレゼンテーションとし、その間、他のセッションはありません。仙台国際センターに隣接する、オープンしたばかりの仙臺緑彩館を会場とさせていただき、司会はベテランと若手の二人ずつで進行していただきます。上級演題に引き続いて、熱い討論を期待しています。
 今回、恒例の食道困難症例検討会を学会初日10月19日夕方に設定いたしました。学会初目に食道分野のセッションはありませんが、「新たなチャレンジとしての低侵襲治療教育」「フレイルティと向き合う」「反回神経麻痺ゼロを目指したベストアプローチ」といった領域横断セッションが予定されています。お時間が許せば、是非1日目からの参加をお願いします。また2日目の夕方には日本食道学会と共同で「食道外科専門医育成セミナー」を企画しています。食道外科専門医を目指す若手の先生方のご参加をお待ちしています。
 今回、食道分野には指定演題を除いて125題の多くの演題をご登録いただきました。ご登録いただきました先生方に心より御礼申し上げます。COVID-19が感染症法上の5類に移行し、face-to-faceで議論できる学会が戻ってきました。昼は学会場で、夜は仙台の町で熱く討論し、友情を深める機会にできればこれに勝る幸せはありません。是非、多くの先生方に仙台にお越しいただくことを祈念して挨拶とさせていただきます。

2023_9_watanabe(m)(160-190).jpg (8 KB) 渡邊 雅之
所属施設:公益財団法人がん研究会有明病院消化器外科
出身大学:九州大学(1990年)
経  歴:1990年 九州大学医学部附属病院(第二外科)研修医
     1999年 九州大学医学部附属病院助手
     2000年 テキサス大学MDアンダーソンがんセンター研究員
     2003年 九州大学医学部附属病院併任講師
     2004年 麻生飯塚病院外科
     2008年 熊本大学医学部附属病院講師
     2012年 熊本大学大学院消化器外科学准教授
     2013年 がん研有明病院食道担当部長
     2018年 がん研有明病院院長補佐・消化器外科部長
     2020年 がん研有明病院副院長
     2021年 熊本大学客員教授
趣  味:野球

2.フェローシップ受賞者留学体験記

2019年度JATSフェローシップ(呼吸器外科分野)
Medical University of Vienna, Austria 三好 健太郎

 2019年に本グラントを授与いただいておりましたが、コロナ流行の影響により当初計画した渡航が延期され、その後渡航先の調整に苦労し、関係いただいた先生方にはご心配をおかけいたしました。最終的にMedical University of Viennaへの留学が実現しました。Viennaは、年間100〜120例の肺移植を行う欧州最大規模の肺移植センターです。現地では、肺移植program directorであるHoetzenecker教授をはじめ、スタッフ、レジデント、移植コーディネーターの方々が非常に温かく対応してくださり、日本のことについても多くご質問いただきました。またViennaの豊富な経験についてご教授いただき肺移植について幅広く深い議論ができる機会を与えていただきました。実際の研修内容としては、DCDドナーの摘出手術やViennaが力をいれているECMO補助下肺移植レシピエント手術に複数参加することができました。これにより、技術的なプロトコルを把握することができました。さらに、ICU回診や外来診察への参加を通じて、肺移植診療ではかかせないICUや免疫抑制、合併症対策、肺移植前後の適応判断やフォローアップなど、内科的管理についても詳細に学ぶことができ、日本で行っている方法との違いや参考になる点に多数気づかされました。これらは帰国後すぐからベッドサイドで活かすことができる知識となりました。
 今回の経験を、日本国内で共有できるよう、ささやかながら与えられた場所で努力したいと思います。この研修をサポートしていただいた日本胸部外科学会国際委員の先生方にはこの場を借りて御礼申し上げたいと存じます。また、日本でも臓器提供例が続く多忙な中、留学をお許しいただいた教室の豊岡伸一教授と同僚の教室員にも感謝しています。皆様の後押しのおかげで、この貴重な経験を得ることができました。

2023_9_miyoshi(160-190).jpg (8 KB) 三好 健太郎
所属施設:岡山大学
卒業大学:岡山大学
経  歴:2002年 倉敷中央病院 外科・呼吸器外科レジデント
     2007年 岡山大学 呼吸器外科医員
     2008年 岡山赤十字病院 呼吸器外科
     2011年 岡山大学大学院 博士課程修了
     2011年 岡山大学病院 臓器移植医療センター助教
     2017年 国立病院機構岡山医療センター 呼吸器外科
     2019年 岡山大学病院 臓器移植医療センター・呼吸器外科助教
趣  味:ランニング
好きな言葉:上善は水の如し


2022年度JATSフェローシップ(呼吸器外科分野)

University Hospitals Leuven 片岡 瑛子

 この度、2023年2月より3か月間、ベルギーのUniversity Hospitals Leuvenへ短期留学させて頂きましたのでご報告致します。今回の目的としては、単孔式胸腔鏡手術やロボット手術の症例だけではなく、経験の少ない気管支形成・血管形成といった拡大手術、経験のない肺移植や悪性胸膜中皮腫症例など幅広い範囲の手術をみて学ぶことであり、その理由のもと、留学先を希望しました。
 胸部外科では7人のattendingと7人のfellow・residentが在籍し、年間1,600件(肺移植70件)の手術が行われています。ホストであるDe Leyn教授のもと、期間中に約150件の手術を見学させて頂きました。肺手術に関しては、拡大手術以外は一部を除きすべて単孔式胸腔鏡手術で行われており、術式に関して個々の症例でどう考えて選択されているのか学ぶことができ大変勉強になりました。ロボット手術は週1回行われており、カルチノイドなどの中枢型早期肺癌で気管支形成を要する場合や複雑区域切除など、単孔式では難しい症例を積極的に選択されているのが印象的でした。
 手術以外にもいろんな先生方とお話させて頂く中で、医療スタッフにおけるチーム医療の役割や教育に関しても本邦との違いを知ることができました。最近では、医療においても働き方改革がすすめられていますが、特に大学病院では教育・研究も求められる中、質を落とさずに現在の仕事量をどのように分散したり減らしたりすることができるか、チーム医療の役割分担や協力体制など、今回の研修を通して改めて考えるきっかけとなりました。
 今回の留学にあたり、理事長である澤先生、国際委員会委員長の湊谷先生、留学先を手配して頂きました千田先生、スポンサー企業および胸部外科学会関係者の皆様、そして不在の間仕事をフォローして頂いた同僚の先生方に心より感謝申し上げます。

2023_9_kataoka(160-190).jpg (7 KB) 片岡 瑛子
所属施設:滋賀医科大学
卒業大学:山口大学
経  歴:2008年 国立病院機構京都医療センター 初期臨床研修医
     2010年 国立病院機構京都医療センター 呼吸器外科
     2014年 滋賀医科大学 呼吸器外科
     2018年 公立甲賀病院 呼吸器外科
     2022年 滋賀医科大学 呼吸器外科
趣  味:旅行、音楽鑑賞
好きな言葉:誠実


2022年度JATSフェローシップ(呼吸器外科分野)
University Hospital Vienna 柳谷 昌弘

 この度、2022年度JATSフェローシップでオーストリアのウィーン医科大学病院で3か月間の短期留学をさせて頂きました。フェローシップに応募させて頂いた理由は進行胸部悪性疾患などに対する拡大手術を学びたいということでした。拡大手術を欧州で多数行っているウィーン医科大学病院を選ばせて頂きました。
 ウィーン医科大学病院での研修は毎日が非常に刺激的なものでした。研修は手術見学が大半です。気管狭窄などに対する気道手術で著名なKonrad教授の気道手術は勿論のこと、スリーブ肺葉切除、胸膜肺全摘、上大静脈置換などの手術を多数見学させて頂くことが出来ました。肺移植も多数見させて頂き、日本との違いを学ぶことができました。稀少な小児の先天気管異常などの手術も学ばせて頂きました。毎日多数行われる多種多様な手術の見学は、さながらウィーンのオペラや音楽を鑑賞しているようでした。
 ウィーン医科大学病院は早朝からカンファランスが行われ、英語で議論されます。区域切除などで日本人医師として意見を求められる機会もとても多く、カンファランスに積極的に参加することができました。ウィーン医科大学病院胸部外科には欧州の他国や南米などからも多くのフェローがいました。手術の待ち時間に、多くのフェローと議論できたことも有意義な経験でした。
 ウィーン医科大学病院胸部外科の前教授のWalter Klepetko先生ともお会いさせて頂く機会がありました。私のウィーン最終週でKlepetko先生から激励の言葉を頂き、とても感激致しました。ウィーンで過ごした日々は充実していました。ウィーンで学んだことを日本の医療に還元したいと思いました。
 最後に本学会よりご支援くださいまして、国際委員会の先生、学会会員の皆様、スポンサー企業の方に御礼申し上げます。留学を許可して下さいました中島先生、日本赤十字社医療センターの古畑先生に感謝申し上げます。

2023_9_yanagiya(160-190).jpg (10 KB) 柳谷 昌弘
所属施設:日本赤十字社医療センター
卒業大学:東京大学
経  歴:2010年 東京大学医学部附属病院 研修医
     2012年 日立総合病院 外科
     2016年 NTT東日本関東病院 呼吸器外科
     2020年 東京大学医学部附属病院 呼吸器外科
     2021年 日本赤十字社医療センター 呼吸器外科
趣  味:読書・映画鑑賞
好きな言葉:人生に必要なのは、勇気と、想像力と、そして、少しばかりのお金だ


2022年度JATS/AATS Foundation Fellowship(心臓血管外科分野)
University Hospitals Cleveland Medical Center 西岡 成知

 私は大学院在学中に、AHAをはじめ、複数の海外での学会発表を経験し、大いに刺激を受け、海外の医師、研究者と意見を交わす重要性を実感しました。また、海外での施設見学を通じ、top surgeonになればなるほど、臨床現場での振る舞いが非常に紳士的であり、また多忙な臨床現場の中でも学会発表や論文作成に注力されている姿を目の当たりにしました。一定期間さらに集中して、海外での臨床現場を経験したいと強く思うように至り、この度はJATS/AATS Foundation Fellowshipに応募致しました。留学先はUH Cleveland Medical Centerを希望致しました。選択理由は、世界的に有名なJoseph Sabik先生の手術を実際に拝見したかったこと、Clevelandに訪れてみたかったためです。留学中はSabik先生をはじめ、Pelletier先生、Abu-Omar先生らの手術症例 全65 cases(100 procedures)を、術者の左側に立って見学させて頂きました。術中はどの先生方も紳士的で、運針・吻合も美しく、また出血もなく、毎回感銘を受けました。また、術前に適応や術式の選択について各先生方と議論し、各手技については術中に質問させて頂き、非常に有意義な時間を過ごすことができました。また、私の意見を採用して頂き、術式の追加・変更を行うこともありました。Routine化されたMICSをはじめ、Ross手術や心移植、VAD装着など、普段一般病院では見られない手技を見学でき、非常に貴重な経験が得られました。研修期間中は、Los Angelesで開催されたAATS annual meetingにも参加でき、本fellowshipのreceptionにも参加できました。恩師や友人にも再会でき、充実した時間を過ごせました。
 今回の留学で得た経験を、手術時間の短縮や手技の向上を含め、実臨床で活かしていきたいと思います。本fellowshipは、一通りの手術経験がある方であれば、非常に有意義な時間を過ごすことができると思います。本fellowshipに多くの方がapplyされることを強く願います。今回私は家族で渡米し、かけがえのない時間を過ごすことができました。短期間でも、ご家族と一緒の留学をお勧めしたいです。
 留学期間中は多くの出会いがあり、沢山のsupportを受けました。周囲に感謝しつつ日々を送り、非常に快適に充実した毎日を過ごすことができました。このような機会を与えて頂き、JATS国際委員会の湊谷先生や事務局の方々をはじめ、関係者各位に、改めまして感謝申し上げます。私は外科医としてまだまだ未熟ですが、今までご指導頂いた恩師の方々のお陰で、外科医を続けられ、このような留学機会を得ることができました。この場をお借りして感謝を申し上げ、私の体験記とさせて頂きます。この度は誠にありがとうございました。

2023_9_nishioka(160-190).jpg (7 KB) 西岡 成知
所属施設:手稲渓仁会病院
卒業大学:旭川医科大学
経  歴: 2006年 淀川キリスト教病院 初期臨床研修医
      2008年 淀川キリスト教病院 外科後期研修医
      2010年 兵庫県立姫路循環器病センター 心臓血管外科 後期研修医
     (2010.5-10神戸労災病院 心臓血管外科へ再派遣)
      2013年 手稲渓仁会病院 心臓血管外科 医長
      2016年 東京慈恵会医科大学大学院医学研究科
          心臓外科学講座にて臨床研究
      2018年 東京慈恵会医科大学大学院医学研究科 
          細胞生理学講座(再派遣)にて基礎研究
      2020年 手稲渓仁会病院 心臓血管外科 主任医長  
          および東京慈恵会医科大学訪問研究員
趣  味:水泳・音楽鑑賞
好きな言葉:念願は人格を決定す、継続は力なり。



編集後記
広報委員会副委員長 岡田 健次
 ますます暑い今年の夏ですが、皆様お元気にお過ごしでしょうか。8月26日(土)、27日(日)、日本胸部外科学会、日本心臓血管外科学会、日本血管外科学会合同の心臓血管外科サマースクールが現地開催されました。100名ほどの参加者は皆元気でこちらはpositiveな熱気に満ち溢れ、女性の参加者も多く我々の将来に期待を抱かせてくれるスクール開催となりました。
 今回のNEWS LETTERでは間近に迫った第76回日本胸部外科学会定期学術集会開催にあたり、齋木佳克統括会長(心臓)、渡辺敦分野会長(呼吸器)、渡邊雅之分野会長(食道)のプロフェッショナルとしての実に熱いメッセージが掲載されています。本学術集会のテーマである「調和と共創」には、各領域で協調しひとつの課題解決にいどみ、ともに創りあげてゆこうという高邁な精神をありありと感じとれました。3領域の先生方の間ではすでに「調和と共創」の心意気が固く構築されていることが伝わります。プログラム構成において、COVID-19により失われた人との距離感を取り戻そうという意図のもと、グラウンド・プレゼンテーションと命名された新しい発表形態の導入が掲げられておりこちらも楽しみな企画であります。
 またフェローシップ受賞者留学体験記では4名の先生方の経験が述べられていますが、それぞれの先生方の経験は、若手医師をencourageするような興味深い内容ばかりで、このletterのタイトルにもあるようにまさにchallenge for the futureが表現されています。
 COVID-19により不条理を強いられてきましたが、様々な方々の熱いメッセージは既にそれを克服しつつあるのだと感じさせていただきました。
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