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No.752024年5月号)

INDEX

1.第76回日本胸部外科学会定期学術集会 開催報告 特集号
  -1.統括会長、分野会長挨拶
  -2.定時評議員会 役員等選挙(選出)結果
  -3.各種表彰
2.第18回日本胸部外科女性医師の会(Woman in Thoracic Surgery:WTS in Japan)開催報告

1.第76回日本胸部外科学会定期学術集会 開催報告 特集号

-1.統括会長、分野会長挨拶
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左から渡邊分野会長(食道)、渡辺分野会長(呼吸器)、齋木統括会長(心臓)、澤前理事長
【齋木 佳克 統括会長(心臓)挨拶】
第76回日本胸部外科学会定期学術集会を終えて―辿り来て、未だ山麓―
 2023年10月19日(木)から21日(土)の3日間、まさに秋高し山粧う秋晴れに包まれた仙台の地で、第76回日本胸部外科学会定期学術集会を開催することができました。胸部外科学の長く重い歴史の一翼を担い学術集会をやり遂げることができましたことに安堵を覚えます。本学会の統括会長を務めさせていただきましたことは、この上なく光栄なことであり、この機会を与えてくださいました本学会の役員、会員の皆様、そして関係各位の皆様方に改めて心より感謝申し上げます。
 3年余りにわたり私たちを苦悩させたCOVID-19 pandemicでありましたが、2023年5月に第5類感染症に位置づけられ社会に落ち着きが戻りました。いよいよ巻き返しを、という意気込みがみなぎった年に開催できたことは幸運でありました。しかしながら、東日本大震災後の時と同様、原状回復のみでは“失った時間”を取り戻せないのではないか、というある種の焦燥感もありました。新たなる価値を創造する必要があり、そのためにはいかなる方略を取るべきか、考えさせられた時間でもありました。pandemic期間に最も影響を受けたことの一つは、人と人との対面の機会が大幅に減少し、情報共有の密度も低下したことであると思います。ニューノーマルとも称される新しい時代様式に対して、順応性の高い若い世代は、ともするとリアルに会う対面形式ではなくともむしろ自分としては効率よく仕事ができる、という風潮まであるように感じます。それでも新たな価値を創造するためには人知を集める必要があります。そのような観点から、呼吸器外科分野会長の札幌医科大学、渡辺敦先生と食道外科分野会長の癌研究会有明病院、渡邊雅之先生と協働し、第76回学術集会のテーマを、“Harmonization”(調和)と“Co-Creation”(共創) -to go one step further-“と設定しました。そして、胸部外科学会学術集会委員会事務局と密に連携を図りながら、学術集会を共創の場再形成の契機とするべく整えた次第です。実際に会場に足を運んでくださった多くの参加者の方々から、学術集会という交流の場を設けることの意義を再確認できたというお声を届けていただけましたことは望外の喜びとするところです。
 共創の場を形成するためには、少しでも深い議論が求められます。そのためには、やはりテーマ数を絞り込む必要に迫られます。今回は日常診療の仲間である臨床工学士が所属する日本体外循環技術医学会(JaSECT)との共同開催としたため、特に会期2日目と3日目にはJATSのセッション枠を3枠供与したことから、さらにテーマ数を絞る必要がありました。そのため、会員の方々の中には自分の関心領域のセッションが組まれていない時間帯もあったと感じられた方もおられたかもしれません。その一方で、日頃聴講することがほとんどない隣接領域の発表と討論に参加でき、目から鱗であった、という意見も上がりました。領域横断セッションは胸部外科学会であるからこそ議論が深まった、沢山の気づきが生まれたという声も聞かれました。また、JaSECT会員からは胸部外科医とのディスカッションが非常に刺激的で有用であったという報告が上がったばかりでなく、熟練の心臓血管外科医からもJaSECTのセッションで討議できた意義の大きさを伝えていただきました。医療安全推進の観点からもチーム医療醸成のためにぜひとも今後も継続したほうが良いというご評価も頂きました。このような小さくとも新たな価値が、今回の学術集会で生まれることに繋がったのは、共に創るという姿勢が生み出した実例ではないかと感じています。
 上述の領域横断セッションについて、いわゆる“社会ネタ”については変容し続ける社会の実情に即応して、何度でも議論の場を設けることは必要と思われましたので、今回の学術集会でも、働き方改革2024に備えて:ここまで実践しています、というテーマで開催しました。今回はJaSECTとの合同セッションとし、新たな視点を盛り込むことができました。一方、隣接領域の横断セッションとしては、これまでも大動脈食道瘻や癌の大動脈浸潤などの典型的な課題が議論されてきました。それら以外にも埋もれているテーマは掘り起こせます。今回は、1.新たなチャレンジとしての低侵襲治療教育、2.Pros & Cons; Four Rounds フレイルティと向き合う、3.反回神経麻痺ゼロを目指したベストアプローチ、4.領域横断型の新医療機器開発、5.胸部外科領域における術中モニタリングの深化と未来像、6.領域を横断して応用可能な医療機器と派生する新治療法の可能性、というセッションテーマを掲げ、隣接領域間で学びの機会を得ることができたと思います。
 胸部外科領域の数ある課題の中で、単独では解決し得ない問題については、他領域から脳外科、耳鼻咽喉科、循環器内科、整形外科、感染症科、末梢血管外科、腹部外科、遺伝科、検査科、ひいては医工学科、そしてPMDA経験者から参加者を募って視座の異なる識者と共に議論を深めることができました。また、新企画の一つとしてNCDセッションを二枠開催しました。これはNCDという大きなデータベースを活用した臨床研究の推進を図るための企画で、共に汗をかいて蓄積した貴重なデータを如何にアプローチすれば活かすことができ、ひいては世界に向け発信できるような解析結果を得ることができるのかについて、実例を交えて解説していただきました。NCD側が会員側に降りてきて共に議論する場となりました。これらのいずれのセッション会場にも共創の精神は宿っていたように感じました。
 胸部外科学会の国際化促進のためにも多くの海外演者を招聘し、登壇して頂くことを願っておりましたが、コロナ禍、紛争による社会事情の不安定化、円安のトリプルダメージのため、必要経費の面から招聘者数を制限する必要がありました。それでも企業からの協賛とご支援があり、素晴らしい外科医と外科系研究者をお招きすることができました。従来型の招聘講演としてご登壇頂いたセッションもありましたが、海外演者にはKeynote lectureを行って頂いた上でパネリストとして議論に巻き込んだことで、参加型のセッションを形成できました。また、2024年第77回学術集会の竹村統括会長からのアイデアを受けて、スライド・プレゼンテーション・ソフトに内蔵されたAIを用いた日英同時翻訳機能のテストランを一部のセッションで実施しました。口述内容の傾向によって翻訳精度の評価はまちまちでしたが、ドイツからの招聘演者などは、自国での学術集会に積極的に活用したいとのコメントを残してくださいました。日本語以上に文法が堅く論理的な言語間での翻訳性能はより高いと期待されます。AIの進化は長足の進歩を遂げるでしょうから、日本語翻訳環境も様変わりする日はそう遠くないと予想されます。学会の国際化の旗印として、最終日の翌日に会場を移してAATS/JATS Aortic Symposium 2023 in Sendaiを開催できました。今後につながる一つのマイルストーンになったかと思います。
 学術集会開催期間の短縮、エッセンス・スライド提示の導入、より強化したポスターセッションとしてのグラウンド・プレゼンテーション、Daily Newsの作成、フードロス低減のためのランチョン事前申込アプリの構築、屋外広場にキッチンカーの提供等々、小さな工夫を加えました。また、細やかな配慮として一部の会議を例外として、会期中における各種委員会開催の自粛をお願いし、企業の方にも展示棟以外における医師との面談を控えていただきました。そのことによってより多くの会員に会議場で集中して参加できるよう留意しました。このような流れが継続されることを希望します。
 末筆ながら、第75回心臓分野会長の荻野先生が「協奏する胸部外科は」未だ道半ばであると書かれたように、「共創する胸部外科」もやはり辿り来て、未だ山麓という実感があります。本学会の益々の発展を祈念しつつ、会員の皆様、協力を惜しまなかった教室員、同門の皆様、事務局、協賛企業の方々からのご支援に心より感謝申し上げ、学術集会の報告といたします。有難うございました。

2023_9_saiki(160-190).jpg (7 KB) 木 佳克
所属施設:東北大学大学院医学系研究科 外科病態学講座 心臓血管外科学分野
卒業大学:東北大学
経  歴:1990年 東北大学医学部卒業
     1998年 東北大学大学院医学系研究科卒業 医学博士号取得
     1995年 Research Fellow, Cardiovascular Research Institute
         Hospital for Sick Children, University of Toronto, Canada
     1996年 Research Fellow, Cardiovascular Research Group
         University of Alberta, Edmonton, Canada
     1999年 Clinical fellow, Division of Cardiovascular Surgery
         University of Alberta, Edmonton, Canada
     2001年 Transplant fellow, Division of Cardiovascular Surgery
         University of Alberta, Edmonton, Canada
     2002年 Clinical fellow, Division of Cardiovascular Surgery
         Children’s Hospital Boston, Harvard Medical School
     2010年 東北大学大学院医学系研究科 心臓血管外科学分野 教授
趣  味:柔道観戦
好きな言葉:life evens out
【渡辺 敦 分野会長(呼吸器)挨拶】
 第76回日本胸部外科学会定期学術集会呼吸器分野会長を務めさせて頂きました渡辺敦です。第76回定期学術集会統括会長齋木佳克先生、食道分野会長渡邊雅之先生との太い絆の下に準備・企画を行い2023年10月19日から21日まで仙台国際会議場にて、第76回定期学術集会が開催されました。学会のテーマは『調和と共創 -さらなる一歩のために-』でしたが、3年ぶりの完全対面開催の効果、要約スライドの表示、自動翻訳機能の活用などもあり、活発な質疑応答のもと、学術的な調和と共創が行われました。この場を借りて、本学会にご参加頂いた多数の会員の皆様、また、ご協力いただきました関係者の皆様に、深く感謝申しあげます。本学会で活発な学術活動がなされ、会員各位が密接に懇親頂き、その役割の一部を担えたことを嬉しく思います。
 呼吸器分野としては、9の上級セッションが設定され、シンポジウムとして「非小細胞肺癌に対する縮小手術の適応」、ワークショップとして「肺癌の治療戦略-組織型別の治療方針―」、「呼吸器外科学における医工連携」、ビデオワークショップとして「低侵襲呼吸器外科手術のベストプラクティス~Do&Don’tを知り尽くす~」、「低侵襲呼吸器外科手術の限界を理解しよう」、パネルディスカッションとして「区域切除におけるリンパ節郭清」、「ドナー因子と肺移植成績」、「縦隔炎の外科治療update」、「ICI時代の悪性胸膜中皮腫の集学的治療」との各々に明確なCQを提示し、その一部が解決されたかあるいは解決に近づいたものと信じて疑いません。また、優秀な395題の公募演題を登録頂き、厳正な評価の上で260題を採択(採択率65.8%)しました。このうち、2題を呼吸器外科分野の優秀演題として選択し、ご発表頂きました。
 海外招聘演者としては、ETS会長のBrunelli先生(Department of Thoracic Surgery, St. James's University Hospital)、AATS会長のJones先生(MSKCC)、Petersen先生(Copenhagen University)、Ng先生(Division of Cardiothoracic Surgery, The Chinese University of Hong Kong Prince of Wales Hospital)、Cypel先生(Division of Thoracic Surgery University of Toronto, University Health Network)の5名の著明な呼吸器外科医にお越し頂き、基調講演などを行って頂きました。この中で、Brunelli 先生にはJATSの名誉会員となって頂いております。また、Jones先生とAATS事務局の方のご尽力により呼吸器分野でのAATSとの仮のジョイントセッションの企画「日米における肺癌に対する外科治療-特に縮小手術について-」が開催されました。このセッションでは、Jones先生に米国の現状基調講演を頂き日本の3名のエキスパートと議論頂きました。第77回学術集会からは、正式な共同セッションとして企画されることが決定されています。心臓血管分野では、AATSとの共同セッションが企画運営されていますが、呼吸器分野でも共同企画がなされ、更なる国際化が図られるものと考えています。
 グランドプレゼンテーションでは、2名の座長に担当頂き、さらに、座長と発表者による評価を行い、従来以上の熱気と活気ある発表と質疑応答がなされていました。各分野に於いて厳正なる点数評価の下、優秀演題が選定されています。
 CPAセッションでの優秀な27題の発表がおこなわれました。従来この評価は中堅の先生に行って頂いておりましたが、さらに熟練者に加わって頂き、セッション全体が緊張感あふれるものとなったと聞いております。
 NCDセッションでの実際に論文化された研究を題材に臨床研究者側と解析チーム側でディスカッションを再現し、その後実際にどのような展開となったかを総括するようにご発表頂くという興味深い企画がなされ盛況でありました。
 併設研究会として呼吸器ロボット支援下手術手技研究会と単孔式胸腔鏡手術研究会も行いましたが、19時頃からの開催にも関わらず多くの皆様が参加され、それぞれの最新の知見を得ることができたと思います。
 最後に、本学会は、心臓大血管・呼吸器・食道の3分野の学術発展はもとより、領域横断的な課題解決、胸部外科医の育成や社会的貢献とその実践を目的としておりますが、本学会にご参加された方々、学会役員の方々、特にプログラム委員の方々、事務を担当頂いた皆様、実務を担当頂いた皆様に心から感謝します。第77回定期学術集会の盛会を祈念し、統括会長 金沢大学 心臓血管外科 竹村博文先生、呼吸器外科分野会長 北里大学 佐藤之俊先生、食道分野会長 東北大学 亀井尚先生にバトンを渡したいと思います。

2023_9_watanabe(a)(160-190).jpg (8 KB) 渡辺 敦
所属施設:札幌医科大学呼吸器外科学分野
卒業大学:札幌医科大学医学部
経  歴:1985年 札幌医科大学 医学部 外科学第二講座 研究生
     1991年 札幌市立病院救急医療部
     1997年 医学博士号取得
     2001年 札幌医科大学 医学部 外科学第二講座 講師
     2002年 Calgary大学 胸部外科(胸部外科クリニカルフェロー)
     2007年 札幌医科大学 医学部 外科学第二講座 准教授
     2013年 札幌医科大学 医学部 呼吸器外科 教授
     2020年 札幌医科大学付属病院副院長(教育担当)
     2022年 札幌医科大学学生部長
趣  味:釣り
好きな言葉:確乎不抜
【渡邊 雅之 分野会長(食道)挨拶】
第76回日本胸部外科学会定期学術集会食道分野の報告と御礼
 この度の第76回日本胸部外科学会定期学術集会を統括会長の齋木佳克教授、呼吸器分野会長の渡辺敦教授とともに主催させていただきました。歴史と伝統ある本学会の学術集会を担当させていただきましたこと、大変光栄に存じております。このような大役をお任せいただきました日本胸部外科学会の役員、会員の皆様方に心より御礼申し上げます。
 3年余りのコロナ禍の長いトンネルを抜け、ようやく本来のface-to-faceで議論できる学会がもどってきました。多くの会員の皆様に現地参加いただき、議論できる学会になったことを大変ありがたく思っています。ご参加いただいたすべての皆様に心より感謝申し上げます。本学会はHarmonization & Co-creation- to go one step further-をテーマとし、齋木先生、渡辺敦先生と会長会議を重ねて準備を進めました。会場を絞って深く議論する学会にすること、Clinical Questionを設定して答えを出す学会にすることを目指し、充実したプログラムを組むことができたと自負しております。
 本学会の大きな特徴である領域横断セッションにおいては、ワークショップ『新たなチャレンジとしての低侵襲治療教育』、Pros&Cons『フレイルティと向き合う』、パネルディスカッション『反回神経麻痺ゼロを目指したベストアプローチ』など、食道分野の先生方に興味を持っていただける内容を多く取り上げていただきました。特に反回神経麻痺は食道領域の学会では常に取り上げられるテーマですが、今回は胸部外科3領域から見た反回神経の見え方の違いに加えて、音声再建を含めた耳鼻咽喉科の香取教授のご講演も拝聴することができ、大変好評でした。
 食道分野では上級演題を5つのテーマに絞り、2日間にわたってひとつの会場で討論できる設定としました。ビデオシンポジウムは小澤壯治先生、亀井尚先生のご司会のもと「cT3br, T4局所進行食道癌に対する低侵襲手術の妥当性」を取り上げました。このセッションではChang Gung大学のYin-Kai Chao先生にご講演いただきました。パネルディスカッションは藤也寸志先生、佐伯浩司先生のご司会で「食道癌術後再建法と長期的なアウトカム」をテーマとしました。Karolinska大学のFredrik Klevebro先生に基調講演をいただきました。ワークショップ1は安田卓司先生と峯真司先生のご司会で「術野内再発を考える」とし、なぜ術野内再発が起こるのか、術野内再発に局所治療は有効かというCQに対して議論しました。ワークショップ2は掛地吉弘先生、竹内裕也先生にご司会いただき、「食道癌手術の周術期管理を考える」をテーマとしました。このセッションでは外国人名誉会員となっていただいたVirginia Mason Medical CenterのDonald Low先生にご講演いただきました。ディベートは森田勝先生と山崎誠先生にご司会いただき「サルベージ手術に予防的リンパ節郭清は必要か」について議論しました。いずれの会場も熱気にあふれており、現地ならではの熱い議論が繰り広げられました。
 一般演題はすべてグラウンド・プレゼンテーションとし、新装なったばかりの仙臺緑彩館で開催させていただきました。本学会の食道分野としてはこれまでになく多くの演題をご登録いただき、久しぶりにお会いする先生方を含めて、多くの先生方と直接お話しができる機会となりました。
 特別講演では山口大学の玉田耕治先生にご来場いただき、桑野博行先生のご司会で、固形癌に対するCAR-T療法の進展と将来展望についてご講演いただきました。新たながん免疫療法であるCAR-T療法が固形癌に対しても有効である可能性についてお話しいただき、大変勉強になりました。分野会長講演では恩師の馬場秀夫先生にご司会いただき、私自身の食道癌治療へのこれまでの取り組みについて講演させていただきました。心臓、呼吸器領域の先生方を含め多くの先生方にご清聴いただき、大変光栄に存じております。
 COVID-19感染が落ち着いた時期に開催できたこともあり、拡大プログラム委員会や全員懇親会など、社交行事もほぼ制限なく開催することができました。海外招聘の先生方との交流を通して、今後のcollaborationにつながる関わりができたことも大きな収穫であったと思います。
 今学術集会の準備・運営を通して、齋木先生、渡辺敦先生という素晴らしいお二人の先生方と一緒に仕事ができたことは私にとって一生の財産となりました。両先生にあらためて、心より御礼を申し上げます。また、ご支援をいただきました澤芳樹前理事長をはじめ役員、会員の先生方、小林さんをはじめとする日本胸部外科学会事務局の皆様、コングレの皆様、ご支援いただきました多くの企業の方々、準備・運営に尽力していただいた東北大学、札幌医科大学、がん研有明病院の医局員の皆さんに心より感謝申し上げます。ありがとうございました。

2023_9_watanabe(m)(160-190).jpg (8 KB) 渡邊 雅
所属施設:公益財団法人がん研究会有明病院消化器外科
卒業大学:九州大学(1990年)
経  歴:1990年 九州大学医学部附属病院(第二外科)研修医
     1999年 九州大学医学部附属病院助手
     2000年 テキサス大学MDアンダーソンがんセンター研究員
     2003年 九州大学医学部附属病院併任講師
     2004年 麻生飯塚病院外科
     2008年 熊本大学医学部附属病院講師
     2012年 熊本大学大学院消化器外科学准教授
     2013年 がん研有明病院食道担当部長
     2018年 がん研有明病院院長補佐・消化器外科部長
     2020年 がん研有明病院副院長
     2021年 熊本大学客員教授
趣  味:野球

-2.定時評議員会 役員等選挙(選出)結果

理事長
 千田 雅之(肺)

副理事長

 志水 秀行(心)

統括会長【第77回】

 竹村 博文(心)

分野会長【第77回】

 佐藤 之俊(肺)亀井  尚(食)

次期統括会長【第78回】

 安田 卓司(食)

次期分野会長【第78回】

 湊谷 謙司(心)伊豫田 明(肺)

次々期分野会長【第79回】

 小野  稔(心)井上 匡美(肺)竹内 裕也(食)

理事
 岡田 健次(心)松宮 護郎(心)塩瀬  明(心)
 川原田修義(心)新浪 博士(心)笠原 真悟(心)
 井上 匡美(肺)岡田 克典(肺)土田 正則(肺)
 竹内 裕也(食)佐伯 浩司(食)

監事

 種本 和雄(心)吉野 一郎(肺)齋木 佳克(心)

-3.各種表彰

-2023年度(GTCSVol.70)優秀論文賞-

心臓血管外科

 原 寛幸(日本赤十字社和歌山医療センター 心臓血管外科)
 Five-year outcomes after coronary artery bypass grafting and percutaneous coronary
intervention in octogenarians with complex coronary artery disease.
 生田亜由美(国立循環器病研究センター 心臓外科)
 Immunocompetent cells in durable ventricular assist device-implanted non-ischaemic
dilated cardiomyopathy.

呼吸器外科

 市之川 英臣(順天堂大学病院 一般呼吸器外科)
 Can acute exacerbations occurring late after surgery with interstitial lung diseases be
predicted?
 椎名 裕樹(千葉大学大学院医学系研究科 呼吸器外科)
 Antibodies against complement component C5 prevent antibody-mediated rejection after
lung transplantation in murine orthotopic models with skin-graft-induced pre-sensitization.

食道外科
 佐藤 弘(埼玉医科大学国際医療センター 消化器外科)
 Effectiveness and safety of a newly introduced multidisciplinary perioperative enhanced
recovery after surgery protocol for thoracic esophageal cancer surgery.

-2023年度 Best reviewer 賞-

心臓血管外科
 國原  孝(東京慈恵会医科大学)
 高橋 信也(広島大学)
 若狭  哲(北海道大学)
 瀬戸達一郎(信州大学)

呼吸器外科

 井上 匡美(京都府立医科大学)
 芳川 豊史(名古屋大学)
 森川 利昭(総合東京病院)

食道外科

 吉田 直矢(熊本大学)

-第6回 JATS Research Project Award-

JATS award for transitional clinical research (臨床研究助成)
(研究期間:3年 支援額:100万円 選出数:1件)

精密肺縮小手術における術後呼吸機能、予後に関する観察研究
 上田 雄一郎(福岡大学病院 呼吸器・乳腺内分泌・小児外科)

JATS award for young investigators (若手胸部外科医研究助成)
(研究期間:2年 支援額:50万円 選出数:3件)

心臓
非侵襲的なリアルタイム心筋保護モニタリング法の開発
 田原 禎生(東京医科歯科大学病院 心臓血管外科)


超高齢化が進む本邦における、肺癌手術患者の周術期の就労状況やQOLの「見える化」を目指す実態調査
 門松 由佳(名古屋大学医学部附属病院 呼吸器外科)

食道
食道切除再建後の頸部センサー装着による咳のモニタリング
 石川 佳孝(東京慈恵会医科大学 外科学講座 消化管外科)

-第76回日本胸部外科学会定期学術集会 JATS Case Presentation Awards-

最優秀演題

心臓

 CCPA4-4 三上 拓真(国立病院機構 帯広病院 心臓血管外科)
 CCPA1-8 田子 竜也(東北大学病院 心臓血管外科)

呼吸器

 LCPA2-7 眞鍋 尭彦(産業医科大学 呼吸器・胸部外科)
 LCPA3-4 小田部 誠哉(国立病院機構 東広島医療センター 呼吸器外科)

食道

 ECPA1-1 黒田 英里(国立国際医療研究センター 外科)

優秀演題


心臓

 CCPA2-8  林  孝明(京都岡本記念病院 心臓血管外科)
 CCPA5-4  伴田 一真(大阪大学 心臓血管外科)
 CCPA3-8  福島  剛(倉敷中央病院 医師教育研修部)
 CCPA2-11 永瀬  崇(京都府立医科大学 小児医療センター 小児心臓血管外科)
 CCPA5-1  菅野 果歩(愛媛県立新居浜病院 心臓血管外科)
 CCPA3-1  稗田 拓朗(福岡徳洲会病院 心臓血管外科)
 CCPA2-10 坂本 裕司(愛媛大学 心臓血管・呼吸器外科)

呼吸器

 LCPA1-5 梅村 太一(金沢大学 呼吸器外科)
 LCPA1-7 北崎  直(東広島医療センター 消化器外科)
 LCPA1-8 橋本 鉄平(小倉記念病院 呼吸器外科)
 LCPA2-4 三浦  隼(神奈川県立がんセンター 呼吸器外科)

食道
 ECPA1-3 古島 理紗子(宮崎大学医学部附属病院 消化管・内分泌・小児外科)

-2023年度JATSフェローシップ受賞者一覧-

心臓血管外科
 堂前 圭太郎(大阪警察病院 心臓血管外科)

呼吸器外科
 伊坂 哲哉(神奈川県立がんセンター 呼吸器外科)
 川口  庸(滋賀医科大学 呼吸器外科)

2.第18回日本胸部外科女性医師の会(Woman in Thoracic Surgery:WTS in Japan)開催報告

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 今回は、「ライフサイエンス業界におけるDiversity and Inclusion-リーダーシップとキャリア形成」というテーマのもと、University of California at San Francisco Medical Centerのcardiothoracic部門でchiefを務めておられるElaine Tseng先生と、バイエル薬品株式会社で研究開発部長を務めておられる梶川麻里子先生のお二人にご登壇いただきました。
 お一人目は、University of California at San Francisco Medical centerのElaine Tseng先生ご講演いただきました。アメリカの胸部外科における女性医師の割合は、4%ぐらいとのことで、割合は日本とあまり変わらない状況のようです。Tseng先生は、ご自分のキャリア形成を振り返り、キャリアの早期には全ての手術を万遍なく行い、その中から徐々に自分の専門を絞っていかれたという過程をお話ししてくださいました。手術のトレーニングはもちろんですが、研究面においてもグラントをとって大血管やTAVI植え込み後の血流解析などの研究を行い、first authorとしてもたくさんの論文を書かれています。Life-work balanceについても触れられており、ご結婚されて娘さんがいらっしゃるとのことですが、幼少時にはご両親や夫、シッターなどと協力して(任せるのではなく協力)子育てを行い、学校へ行ってからも送り迎えや勉強を手伝ったりというのもされていたとのことです。外科医としてキャリアを途絶えさせず、手術も家庭も学術も両立している、という偉業を普通のことのように淡々と語られていました。Tseng先生のキャリアや業績は、現在日本の第一線で活躍している胸部外科医と比べても遜色なく、女性のロールモデルとしてはもちろん、子育てを協力して行いたい男性にも大変参考になるご講演だったのではないかと思います。
 お二人目はバイエル薬品株式会社の研究開発本部長、梶川麻里子先生にご講演いただきました。梶川先生は、医学部を卒業して医師免許を取り、研修医も終えて内科医として勤務されていましたが、そのまま臨床医として働く選択をされず、製薬会社のバイエルへ入社されたという異色の経歴の持ち主です。臨床医として疲れ切ってしまったので、思い切って製薬会社に飛び込んだというご自身のキャリアは簡単に述べられ、ご講演の内容は主に、梶川先生とバイエルが、diversityや女性のinclusionをどのように捉え、どのようなことに取り組んでいるかをお話しされました。多様性を平等に受け入れ、同等の価値を認められるinclusiveな組織は、多様性を受け入れない組織に比べ6倍革新的で機動的、3倍のハイパフォーマンスが得られるとされています。Diversityにおいて女性の才能を生かすのは非常に重要ですが、残念ながらスタート時には五分五分だったキャリアは、年を経てリーダーポジションになっていくにつれ男性の割合が増えていくのも事実です。一般的な女性の性質として、昇進や増給の希望を自分から積極的に訴えないなどあり、女性のプロモーションを上げるためには自分から手を上げる男性と同じ方法ではなく、会社として積極的に女性を引っ張る必要があるという認識です。バイエルは会社として2025年までにマネージメントポジションの女性の割合を50%にするという具体的な目標を掲げており、そもそも女性雇用の母体数が少ないのにマネージャー職だけ女性割合が多いのもおかしいので、積極的に多様な働き方の女性の雇用や、いったんキャリアを中断して子育てなどを行なった女性のタレントを生かす取り組みを行なっているとのことです。会社全体としてパワーアップするために、現在まだ大きなポテンシャルを秘めている女性の力を有効活用していく、そのために男女の違いを理解して、具体的に対策を立てていく、というお話で、なんとか胸部外科分野の人手不足にも応用できないかと考えさせられました。
 現地会場には世話人も含め20人の聴講者が来場してくださいました。学会会場の一室での開催で、時間厳守での会場使用でしたが、最後に記念撮影を行なって会を締めくくりました。
 今回はパンデミック以前と同様の現地開催形式でした。学会の方々のご協力があり、スムーズに会の進行ができました。
 会場へ足を運んでFace to faceでディスカッションができるというのは大変喜ばしく刺激がある反面、テレビやインターネットで、見逃し番組がオンデマンドでいつでも見られる時代に、現地に会場にいなければこの有意義なセッションが聞けないというのは少し残念な気がしました。情報や知識の共有をいかにしていくかは今後の課題かとも感じました。
 あと毎年感じるのは、女性医師の会ということで、どうしても女性が参考にする話と取られがちです。diversityがこれだけ盛んに討論される中、男性にも通用するロールモデルであったり、また女性いかにパワーとして取り入れていくか、上司として、部下として一緒に働く上で参考となるご講演でしたが、参加者はほとんど女性だったのは、これも少し残念でした。子育ても含めて女性が働きやすい環境は、男性も働きやすい環境と思われますので、一緒に考えていける会になって行けばと思います。
 今回の会合開催にあたり、学会事務局、第76回胸部外科学会事務局と統括会長 齋木佳克先生、御共催いただいた日本胸部外科学会と日本医師会の皆様にはご理解と温かいお力添えをいただきました。皆様に心より謝辞を申し上げます。
 最後に、WTSの掲示板についてお知らせいたします。オンラインでの双方向性の意見交換の場として掲示板を設けております。会員の皆様のみならず、胸部外科に興味のある若手女性医師の皆様にもご参加いただければ幸いです。 なお、掲示板の閲覧と書き込みは不正利用を避けるために参加者限定とさせていただき、匿名での投稿が可能です。 参加に際しご心配な点等がありましたらお知らせいただければ幸いです。掲示板参加ご希望の方は、本会ホームページのお問い合わせから「掲示板参加希望」をご選択ください。また、運営スタッフも募集していますので、お気軽にお声がけいただけますと幸いです。一人でも多くの仲間を作りましょう。

2024_4_yamazaki(160×190).png (39 KB) 山崎 祥子
所属施設:舞鶴共済病院 心臓血管外科
卒業大学:山形大学
経  歴:2000年 山形大学医学部卒業、京都府立医科大学附属病院心臓血管外科入局
     2013年 京都府立医科大学附属病院 心臓血管外科 助教
     2020年 兵庫医科大学病院 心臓血管外科 助教
     2022年 舞鶴共済病院 心臓血管外科 部長
趣  味:野球

編集後記
広報委員会委員 瀬戸 達一郎
 いよいよこの4月から医師の働き方改革が始まりました。タスクシフトなどを含めた業務の効率化や医師のマンパワー不足など、解決すべき問題は山積みで準備不足の感は否めません。一方で、規制強化により、これまでの医療システムの再編が進む可能性も示唆されます。
 さて今号では、齋木佳克統括会長、渡辺 敦分野会長、渡邊雅之分野会長による第76回日本胸部外科学会定期学術集会開催報告が掲載されています。ウィズコロナから、コロナウイルス感染症が第5類となったアフターコロナとなって初めての学会でした。ニューノーマルの利便性も実感してはいたものの、やはり対面形式での学会の意義を再認識いたしました。なかでも領域横断のセッションは、三領域にわたる胸部外科学会ならでは取り組みであったと思います。ご尽力を賜った先生方に感謝申し上げます。
 また第18回日本胸部外科女性医師の会の開催報告では、お二人の講師の先生の講演の内容が報告されています。Eline Tseng先生のキャリアは女性のロールモデルだけでなく男性にも大変参考になり、梶川麻里子先生のInclusiveな組織は多様性を受け入れない組織と比べ、6倍革新的で機動的、3倍のハイパフォーマンスは印象に残りました。働き方改革に加えダイバーシティの推進も、未来の医療をより良くするための重要な要素であると、再認識いたしました。
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