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No.742024年1月号)

INDEX

1.理事長 就任の挨拶
2.フェローシップ受賞者留学体験記
3.第77回日本胸部外科学会定期学術集会 演題募集について(2/15(木)~)

1.理事長 就任の挨拶

胸部外科学会の持続可能な成長のために
 まずは、元日から発生した能登半島地震により被害に遭われた方々に心よりお見舞い申し上げます。一日も早い復興をお祈り申し上げます。
 さて、このたび、伝統ある日本胸部外科学会理事長に就任させていただきました。学術集会の3分野会長制度の導入や、JATS-NEXT制度の制定、GTCCの発刊など澤前理事長を中心とした理事会の流れを引き継ぎつつ、多難な変革期を迎えつつある胸部外科学会の持続可能な成長のために微力ながら貢献させていただく覚悟でございます。
 3分野の外科医の集合体である胸部外科学会は、それぞれの分野がすでに基盤となる学会を有している統合学会であり、ある意味日本外科学会に似た立場にあります。分野統合学会のあるべき姿を模索し、われわれは既に学術集会の開催形式を改め、3分野がそれぞれ最大のパフォーマンスを発揮できるように3会長制に舵を切りました。これまで胸部外科学会が「まとまりのない3分野を内向きに何とかまとめようとしてきた」という歴史を転換し、同じ土台には乗った上で3分野がそれぞれ別個に外向きに展開するという新機軸であり、学会の活性化に十二分に資するものと考えています。この改革は、食道、呼吸器分野に恩恵をもたらすのみでなく、心臓分野にとっても利するものであってこそ意味のあるものになると思います。心臓分野のさらなる発展に関して、副理事長の志水先生とともに尽力してまいりたいと思います。
 胸部外科学会は、3分野の学術的発展にとどまらず、時代の要請・時代の変化に対応した、課題解決型の学会運営に取り組まなければなりません。働き方改革にともなうワークシェアリングはこれからの日本の医療にとって必須のものである一方、質の低下は最小限にしていかなければなりません。本邦ではNP、PAとは少し違った「特定行為に係る看護師研修制度」によるいわゆる特定看護師制度が動いています。資格を取った特定看護師が胸部外科領域の術後管理などで最大の効果を発揮できるように、しっかりした教育システムを構築することが患者の恩恵となりますので、松宮チーム医療推進委員会委員長とともにこの課題解決に向けて進んでまいりたいと思います。また、特定看護師にとどまらず、「臨床工学士等に関する法令の改正」により臨床工学士がVATSやMICSに手洗いして参加しカメラ助手ができる様になりました。人数の少ない市中病院では福音になるものと思われます。時代の変化を取り入れ、胸部外科医が持続可能な生活を送れるように必要な制度を確立していきたいと思います。
 また、若手教育も重要な課題といえます。既に、心臓血管外科学会にはU-40があり、呼吸器外科学会にも若手教育部会が存在してそれぞれに活発な活動をしています。胸部外科学会としては臨床に特化した若手教育は各学会に任せ、アカデミックサージャンを育成するべくJATS-NEXTを組織しています。臨床研究の第一歩は症例報告による気づきにはじまります。地方会の活性化を通して若手のやる気を引き出すことが重要となります。各地方会での優秀演題に秋の学術集会での発表機会を与えるCase Presentation Awardでは、とかく留守番として学会に参加できない若手が学術集会に参加しアカデミズムに触れるきっかけになると思います。また、本年はJATS-NEXTによる初めての学術集会であるJNACが大阪で開催となります。成功裡に終わることを期待します。また、JATSフェローシップでは、若手の欧米への短期留学支援を行なっています。期間は1−3ヶ月で行先との交渉は国際委員会が担当し希望の留学先へ行けるように斡旋いたします。これまでも欧米の有名どころの大学病院に多数の若手を送り出してきました。さらに、呼吸器分野では欧州の3つの違った病院を1ヶ月ごと3ヶ月かけて回るプログラムも開始できそうです。初めの1ヶ月は英国で、次はイタリア、最後の1ヶ月はウィーンで、などと自由に組むことができる様に考えています。学術集会では是非、国際委員会企画のホームカミングセッションに立ち寄りこの制度を利用して留学した先輩たちの声を聞いていただければと思います。
 国際関係では、これまでもAATSとの間で心臓分野ではAortic SymposiumやMitral Conclaveを学術集会の際に開催してきました。今年の秋は呼吸器分野もAATSとの間で協定を結び、毎年9月にニューヨークで開催されているInternational Thoracic Surgical Oncology Summit(ITSOS)を、今年の金沢での学術集会においてITSOS at JATSとして開催しますと同時に、ニューヨークでのITSOSの際に1セッションを我々のために割いていただきJATS at ITSOSを開催いたします。これを機会に呼吸器でITSOSに参加したことがなかった人も是非ニューヨークでのITSOSにご参加ください。また、ニューヨークに行けない人は金沢で開催するITSOS at JATSにご参加ください。本企画は延長オプションのついた単年度契約です。是非とも金沢、ニューヨーク共に成功させて毎年開催に持ち込められればと考えています。一方、海外にはSTS、EACTS、ESTS、ASCVTSなどの多くの国際学会が存在します。心臓血管外科学会、呼吸器外科学会、食道学会それぞれが国際化を進めていく中での交通整理も必要と考えています。
 先日、内閣府から日本医学会連合を通じて各学会に、本邦における医療分野の研究開発に関し、現状や課題を問うアンケートが届きました。わが国はいまだ開発力はあるもののそれを世界展開する資金が足りず、外資の巨大企業に技術を安く買い叩かれているのが現状と思います。資金が足りない原因の一つとして新規の技術にいち早く保険点数をつけることができない日本のある意味優秀な官僚制度があると思います。政治を動かさないと政策誘導はできません。日本医師会が力を落としている現在、医科系学会が日本医学会連合を通して強い働きかけをする必要を感じます。
 事務局改革は、澤前理事長のもと始まりましたがいまだ道半ばです。多くの問題が山積しています。学会の事業が拡大し事務作業が増加していく中で本邦の労働力不足は深刻です。学会の事業を拡大させていく中でどのような事務局が最も適しているのか、事務局のあり方委員会を再度立ち上げました。今後の議論の推移を見守りたいと思います。
 最後に。学会員の活躍無くして学会の活性化はありえません。Z世代の若者が増えていく中で、いかに若者に活躍してもらうか。24時間働くのが当たり前の時代であった20世紀に医学部を卒業し医師になった世代がこの国・この学会を支えていけるのは長くてあと15年ほどです。昭和、平成1桁卒業の世代が過労死をせず次の平成世代にバトンを上手に渡すことができるようにするには地道な社会改革が必要と考えています。胸部外科領域の医療ならびに胸部外科学会が時代に合わせた形をとりながら持続可能な発展を遂げられるように努力して参りたいと思います。

2024_1_chida(160×190).jpg (8 KB) 千田 雅之
所属施設:獨協医科大学 呼吸器外科
卒業大学:東北大学
経  歴:1986年 東北大学卒業
     1992年 ノースウェスタン大学 呼吸器科
     1993年 コロラド大学 呼吸器科
     2001年 東北大学病院 講師
     2008年 獨協医科大学 准教授
     2010年 獨協医科大学 教授
     2017年 日本呼吸器外科学会 理事長
趣  味:オートバイ、登山、カナディアンカヌー
好きな言葉:一隅を照らす。国の礎(いしずえ)。

2.フェローシップ受賞者留学体験記

2019年度JATSフェローシップ(心臓血管外科分野)
Boston Children’s Hospital 津村 早苗(旧姓 山内)

 2019年度JATSフェローシップを受賞し、約3年のタイムラグを経て、このたびBoston Children’s Hospitalに短期留学させていただきました。私は2010年から大阪母子医療センターで小児心臓外科医として勤務してきましたが、これまで留学経験はなく、一度は世界の名門病院での手術と周術期管理を学びたいという思いから、JATSフェローシップに応募しました。2019年度、念願のフェローシップを受賞し、Boston Children's Hospitalでの留学が決定した直後、COVID-19のパンデミックが勃発し、留学計画は頓挫しました。コロナ禍がほぼ収束し、今年、留学再開の機会が巡ってきた訳ですが、実はこの間、個人的には結婚と出産という一大イベントがあり、産休育休を経て、2022年4月に職場に復帰、さらに5月には部長職に就任という、家庭はおろか病院からも長期間離れられない状況となっていました。しかし、交渉の結果、日本のゴールデンウィークを活用して2週間という非常に短期間ではありますが、留学が実現しました。この素晴らしい機会を提供してくださったBoston Children's HospitalのPedro J. del Nido先生と、留学の交渉にお力添えくださった国際委員会前委員長の齋木佳克先生には心から御礼申し上げます。
 Boston Children’s Hospitalでは手術やCICUの見学を行いました。アメリカで最も多くの先天性心疾患の手術を行っている病院だけあり、最低でも1日に4つの手術が同時に行われていました。AATSが重なる日もありましたが、それでも手術のない日はなく、2週間の滞在中に手術室間を移動しながら非常にたくさんの手術を見学することができました。
MAPCA unifocalizationの術中PA flow studyやFontan手術のBiventricular repair conversionなど、日本ではあまり見る機会のない手術もあり、勉強になりました。特にFontanのBiventricular repair conversionは、日本ではGood Fontanと評価され経過を見るであろう症例を積極的にconversionしており、この流れはいつか日本にも来るのだろうと感じながら見ていました。
 留学中、各国からのフェローとも交流しましたが、皆、非常に熱心で、土曜日の午前中にはJohn Mayer先生を囲んで勉強会を行っていました。私も参加させていただき、刺激を受けました。
 また、Boston Children’s HospitalのあるNew England地方は集約化に成功した地域であり、Boston Children's Hospitalが広範囲をカバーしています。搬送JETやECMOチームなどが存在し、日本では金銭的に難しい部分もありますが、地域拠点化のヒントが多くあるように感じました。
 短い期間でしたが、内容の濃い経験ができ、非常に多くのことを学ぶことができました。この貴重な経験を日々の診療に還元できるようこれからも精進したいと思います。

2024_1_tsumura(160×189).jpg (7 KB) 津村 早苗(旧姓 山内)
所属施設:大阪母子医療センター 心臓血管外科
卒業大学:弘前大学
経  歴:2004年 むつ総合病院 (弘前大学卒後臨床研修プログラム)
     2005年 弘前大学医学部附属病院 (弘前大学卒後臨床研修プログラム)
     2006年 弘前大学医学部附属病院 呼吸器心臓血管外科
     2006年 青森労災病院 外科
     2007年 弘前市立病院 外科
     2008年 弘前大学医学部附属病院 呼吸器心臓血管外科
     2010年 大阪母子医療センター 心臓血管外科
     2014年 弘前大学大学院医学研究科 胸部心臓血管外科学講座
     2015年 大阪母子医療センター 心臓血管外科
     2018年 大阪大学大学院医学系研究科 心臓血管外科
     2019年 大阪母子医療センター 心臓血管外科
趣  味:音楽鑑賞
好きな言葉:三人寄れば文殊の知恵


2019年度JATS/AATS Foundation Fellowship(呼吸器外科分野)

University of Pittsburgh Medical Center, USA 栢分 秀直

 この度、2023年9月から約6週間、2019年度JATS/AATS fellowshipでUniversity of Pittsburgh Medical Center(UPMC)に滞在させていただきました。この場を借りて、JATSおよびAATSの関係者の皆様に感謝申し上げます。
 私は2019年度にfellowshipを受賞し、2020年初夏の訪米を予定しておりました。当時は大学院生で、卒業後の留学を希望するか、実際にアメリカでの生活を経験して決めようと考えており、fellowshipに応募しました。訪米の日程も決め、見学先も決めて準備を進めていたところ、COVID-19のパンデミックに遭遇し、やむを得ず無期限延期となりました。その後、再度fellowshipでの短期留学のお話を頂き、最終的に2023年春頃に留学スケジュールを決定し、無事にPittsburghに行くことができました。
 前置きが長くなりましたが、University of Pittsburgh Medical Centerでは、特に食道手術が有名なところで、肺や縦隔の手術に加えて、食道手術も多く見学させていただきました。UPMCを選んだ理由としては、肺移植の臨床と研究で有名であったからですが、今回滞在したUPMC Shadyside Hospitalでは肺移植以外の胸部外科手術が行われており、ロボット支援下手術を中心とした手術の見学をしました。食道手術では普段見ない視野での縦隔の解剖の勉強ができました。肺や縦隔の手術に関しては、特にロボット支援下手術が主で、よい視野展開の仕方やロボット手術の特徴をどのように生かして安全かつスムーズな手術を行うか、などといった非常に参考になるものを会得できました。また期間中に1日UPMC Presbyterian Hospitalの方にも見学に伺うことができ、肺移植後患者の回診や臨床および研究のカンファレンスにも参加させていただき、また研究室の方にも案内していただいて大変勉強になりました。一方で電子カルテシステムへのアクセス権はなく、写真撮影も基本的に禁止でしたので、制限もかなりある中での研修でした。
 今回短期留学を経験し、アメリカ胸部外科医の日常を見ることができたのは非常によい経験でした。今回の留学で、私自身視野が広がりましたし、是非留学したいという意欲が増えました。若い先生方にはこのような貴重な機会を利用して海外の胸部外科に触れて刺激を受けてもらえればと思います。最後に私の不在の間を支えてくださったスタッフの先生方、関係各所の皆様に心より感謝申し上げます。ありがとうございました。

2024_1_kayawake(160×188).jpg (10 KB) 栢分 秀直
所属施設:神戸市立医療センター中央市民病院 呼吸器外科 副医長
卒業大学:京都大学
経  歴:2010年 京都大学医学部附属病院 初期研修医
     2012年 倉敷中央病院 呼吸器外科
     2015年 京都大学医学部附属病院 呼吸器外科
     2017年 京都大学大学院医学研究科 博士課程
     2021年 京都大学大学院医学研究科 博士課程修了
     2021年 京都大学医学部附属病院 呼吸器外科
     2022年 神戸市立医療センター中央市民病院 呼吸器外科
趣  味:バドミントン、旅行、スポーツ観戦
好きな言葉:実ほど頭を垂れる稲穂かな


2020年度JATSフェローシップ(食道外科分野)
McGill university, Montreal General Hospital 牧野 知紀

 この度、2020年度JATSフェローシップ(食道分野)にてカナダ・モントリオールにあるMcGill universityに短期留学させて頂きましたのでご報告いたします。
 留学の動機につきましては、今回留学したMcGill university, Division of Thoracic and Upper Gastrointestinal SurgeryのLorenzo Ferri教授は過去に日本胸部外科学会定期学術集会にも招待されている著名な外科医ですが、欧米の外科医では珍しく我々の教室と同様に気管・大動脈浸潤を伴うT4b食道癌症例についても積極的な拡大手術を行っており、ぜひ一度手術を見学したいと思ったのがきっかけでした。
 私の場合、COVID感染にて渡航が3年遅れたことに加え医局事情により2週間という非常に短期間の留学ではありましたが、Ferri教授のもと食道癌手術(Ivor-Lewis 2件、McKeown 1件)、食道アカラシア手術(Heller myotomy+fundoplication)、胃癌手術(subtotal gastrectomy)、胃GIST手術(partial gastrectomy)を見学し、低侵襲手術・開腹・開胸手技といったアプローチ法のvariation、surgical deviceの種類と使い分け、肥満が多い北米患者ならではの手術の困難さなど、本邦との相違も含めてどれも興味深い内容でした。術中にFerri教授から意見を求められ自施設の方針や手技をお答えすると、「それは良いアイデアだね」と即座に取り入れてもらったりとFerri教授の懐の深さも感じました。残念ながら私の滞在中に食道癌の拡大手術はありませんでしたが、過去の関連スライドなどを共有いただきながら、手術手技や治療strategyについてdiscussionする機会をもって頂きました。その他にも内視鏡治療やClinic見学に加え、Tumor board、clinical/research meetingでのdiscussionにも入らせて頂きました。また全体のカンファレンスで自施設の食道手術や臨床・研究の取り組みなどを発表する機会もいただき、海外の外科医や研究者たちと多くのdiscussionにて相互に見識を深めることが出来ました。フェローやレジデントなど若手外科医たちとも多くcommunicationを持てたのも大変良い機会でした。手術手技もそうですが、Ferri教授の患者診療やフェローなど若手教育に対するエネルギー・情熱をいたるところに垣間見れたことが何より印象的でした。
 このような有意義かつ名誉ある機会を与えて頂きました前理事長の澤先生、国際委員会委員の諸先生方、スポンサー企業の皆様には厚く御礼申し上げます。また2週間にわたり病院内・外で本当に手厚くもてなして頂きましたFerri教授のhospitalityにも深謝いたします。最後になりますが、今回フェローシップに推薦頂きました土岐祐一郎教授、江口英利教授、留守中に支えて頂いた同僚の先生方、本当にありがとうございました。

2024_1_makino(160×190).jpg (7 KB) 牧野 知紀
所属施設:大阪大学大学院 消化器外科学
卒業大学:大阪大学
経  歴:2001年 大阪大学医学部附属病院 研修医
     2002年 国立大阪医療センター外科 レジデント
     2005年 公立学校共済組合 近畿中央病院外科 レジデント
     2006年 大阪大学大学院医学系研究科外科系臨床医学 大学院生
     2010年 Cornell大学(New York)Postdoctoral research fellow
     2012年 近畿大学外科 助教
     2014年 大阪大学大学院医学系研究科外科学講座消化器外科学 助教
     2018年 大阪大学大学院医学系研究科外科学講座消化器外科学 学部内講師
趣  味:バスケットボール、テニス、スキー
好きな言葉:Chance favors the prepared mind


2022年度JATSフェローシップ(心臓外科分野)
Cliniques universitaires Saint-Luc(UCLouvain) 田所 直樹

 2022年度のJATSフェローシップにより、ベルギー・ブリュッセルで約3ヶ月の留学の機会をいただきました。今回の留学先であるCliniques universitaires Saint-Lucには、自己弁温存大動脈基部手術(reimplantation法)の権威として知られるGebrine El Khoury先生がおり、先生の手術技術、マネージメント、そして手術に対する考え方を学びたく、この病院を留学先として選びました。
 私が自己弁温存大動脈基部手術と出会ったのは、2014年に国立循環病研究センターで心臓外科の研修を始めたときです。当時、血管外科部長として活躍されていた湊谷謙司先生(現京都大学心臓外科教授)がこの手術を積極的に行っていて、自己弁を人工血管に内挿・縫合することで温存する手法に、私は大きな感銘を受けました。当時はBruxelles Hightを用いてGraft sizeを決定しており、この名称の由来や背景を知らないまま使用していました。しかし、後にそれがEl Khoury先生のグループからのものであることを知り、深い関心を持つようになりました。そんなご縁から、湊谷謙司先生の推薦を受け、ブリュッセルへの留学が実現しました。
 私の研修期間は5月から8月の約2ヶ月半でした。毎日、朝8時のミーティングを経て、9時から手術が開始されます。年間約2000件の手術が行われており、心臓外科の手術も毎日3〜4件程度実施されていました。El Khoury先生の手術は、ドレーピングから手術方法まで一定の「型」が確立されており、スタッフ全員が同じ手順で手術を進める姿が印象的でした。特に、大動脈弁形成の手術は、非常に高度な戦略と手順が確立されており、その精緻さに圧倒されました。El Khoury Lineと称される手法、弁の緻密な調整、そして冠動脈の美しい再建を直接目の当たりにすることができ、大変有意義でした。手術が終了すると、El Khoury先生は気さくに話しかけてくれるため、多くの質問をすることができました。
 留学を決意した当初、フランス語圏での生活に不安を感じて躊躇していましたが、実際に挑戦してみると多くの学びがあり、充実した3ヶ月を過ごすことができました。このような留学は、自身のスキルアップに非常に有効な機会ですので、若手会員の皆様にもぜひ応募をおすすめします。今後の目標としては、留学で得た知識と経験を臨床に活かし、同僚や後輩たちにも共有することを考えています。最後に、この留学を支えてくださった湊谷謙司先生や胸部外科スタッフの皆様、私の不在中にサポートをしてくださった福嶌五月先生や国立循環器病センター心臓外科の皆様、そして理解と支援をしてくれた家族に心からの感謝を申し上げます。本当にありがとうございました。

2024_1_tadokoro(160×190).jpg (8 KB) 田所 直樹
所属施設:国立循環器病研究センター
卒業大学:東京慈恵会医科大学
経  歴:2012年 東京慈恵会医科大学医学部医学科 卒業
     2012年 東京慈恵会医科大学付属柏病院 初期研修医
     2014年 国立循環器病センター 心臓血管外科 レジデント
     2017年 国立循環器病センター 心臓血管外科 専門修練医
     2019年 国立循環器病センター 心臓外科 医員
趣  味:読書
好きな言葉:雨垂れ石を穿つ

3.第77回日本胸部外科学会定期学術集会 演題募集について(2/15(木)~)

 第77回定期学術集会(会期:2024年11月1日(金)~4日(月))の演題受付期間は、2月15日(木)~4月26日(金)です。
 受付開始前に改めて詳細をご案内いたしますが、まずは取り急ぎ演題受付期間のご連絡を申し上げます。
 たくさんのご応募お待ちしております。

編集後記
広報委員会委員 矢島 俊樹
 元旦に発生した能登半島地震により被害にあわれた会員の皆様ならびにそのご家族の方々に心よりお見舞い申し上げ、一日も早い復興をお祈り申し上げます。今年の定期学術集会は11月1日~4日に金沢で開催されますが、震災後における運営であり統括会長の竹村博文先生(心臓)、分野会長の佐藤之俊先生(呼吸器)、亀井尚先生(食道)ならびに主催関係者の方々におかれましては、そのご苦労計り知れないものと推察いたします。会員の皆様方におかれましては是非とも多くの演題登録をしてご協力頂けることを切に願う次第です。
 今回のNews Letterでは冒頭に新理事長として就任されました千田雅之先生のご挨拶が掲載されています。多難な変革期を迎える胸部外科学会が持続可能な成長を実現するため、様々な取り組みを行っていく決意が述べられています。これら理事長のお言葉を胸にとめ、本会が成長を続けられるよう一人一人が努力していくことが大切でありますので皆様ご協力の程宜しくお願い申し上げます。
 また、フェローシップ受賞者留学体験記では4名の先生方の体験が述べられています。3名はコロナ禍の影響で3年程度延期の苦難を乗り越え実現し、アメリカ、カナダ、ベルギーなど世界各国で実りある貴重な経験をしてきております。今後も若手の先生方におかれましては、成長を続けるための取り組みとしてフェローシップに応募して頂ければと期待致します。
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